中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

日本のお箏と尺八

 土曜日、上海は曇り時々霧雨、気温は 8度。例によって忙しい土曜日である。
 朝から小雨降る中を mobikeで静安寺に向かい、胶州路 x 新闸路にあるヤマハにて PMCドラム科のグループレッスンの講師を 1時間。
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 修了後は、まだまだグズった霧雨の中をまたまた mobikeで江苏路まで走って、そこから地下鉄を乗り継いで 10号線の伊犁路駅で下車。そしてまたまた mobikeにて 伊犁路 x 古羊路にあるイタリアン『bistro fiore』にてまずは腹ごしらえ。ココのカレーはビフテキ(死語)が乗っているのだ。柔らかくて本当に美味しいミディアムレアのビーフステーキ。コレだけでも食べる価値あるのだが、カレーもまた良い感じの辛さで超絶美味しい!!!オススメです。
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 食後は地下の LL Barに降りていきドラムの個人レッスンである。本日は 2コマ 2名。
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 レッスン修了後は慌てて荷物を纏めて mobikeに飛び乗り、今度は高島屋ミニライブの PAである。本日の出演者は日本のお琴と尺八のデュオ(二人とも日本人)である。例によって楽器用のマイクは全て自前で持ち込みである。ワタクシの現場はこんな感じ。Graphic EQは尺八用のヘッドセットマイクの特性に合わせて補正をかけた。
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 箏のマイクは、エア用としてオーバーヘッドにワンポイントステレオマイクの RODE NT4を、そして下から SHURE Beta57を使ってサウンドホールを狙い、音量が足りなかった時の為に予備としてピエゾピックアップも仕込ませて頂いた。こんなに狭い現場なのに、箏だけで 4回線!まるで大ホール並!?の重装備である(笑) なぜなら今まで請け負った『箏』の仕事で、個人的に『自分が納得の行く音』が出せた事が非常に少ないので、とにかく何としても攻略したいのだ。箏に限らず和楽器は『木の質感』を出すのが本当に難しい為、ヒタスラとことん挑戦して経験を積むしか無い。良い音を出す為には、ある程度のセオリーは有っても『絶対にこうしなきゃダメ』というルールなんて無いものね。一現場一現場を大切にノウハウを溜める事。コレしか無いし、こういうのが一番楽しくてやり甲斐が有る。
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 そしてリハーサル開始。予め SHURE BLX1のヘッドセットにてワンツーを行ってトータル EQを作っていたので、尺八は何もしなくても非常に良い音が出せたのでまずは一安心だ。しかし問題は、やはり『箏』である。予想通り中々手強くて苦労した。

 中々良い音が作れなかったので、全てのマイクやピエゾに対して、ちょっと時間をかけて Soloで一つずつヘッドフォンでジックリとモニタしてみたのだが、どうやら箏の楽器本体の底面(裏側)に有るサウンドホールから出る音は、独特な?中域が張った言わば『デフォルメされた』音が出ている事が判った。 この穴の真正面に立てた Beta57から聞こえる音は決して(いわゆる我々が馴染みの有る)『箏の良い音』では無い!!!! のだよ。ちょービックリ(驚)

 不思議に思って色々考えてみたら、そりゃそうじゃん! この楽器の下に潜り込んで穴の真正面に寝転ばない限り、この穴の直接音は聞こえないワケで、つまり、この穴から出る音をお客様や奏者が直接聴く事は物理的にあり得ない為、一度床に反射した『間接音』こそが『箏の音色』になり得るワケだ。

 そんなワケで、本来このサウンドホールに向けた Beta57の音をメインに作り込もうと思っていたが、ドラスティックに方針転換する事にした。Soloで聴く限りやはりエアのNT4の音が一番『箏らしい』音がしていたのだが、これは楽器から距離があるため低域は殆ど消滅してしまってるし、当たり前だがカブりまくって(周りの音を拾いまくって)直ぐにハウるので全くフェーダーを突けない。故に『困ったときのピエゾ頼み』じゃないがピエゾとエアを中心に全てのマイクを足してシンセサイザー的に音場を卓内でシミュレーションして作る事にした。
 ピエゾは『箱鳴り』を綺麗に拾ってくれるので、これをベースに低域をメイキングし、でもコレだけだとエレアコみたいなプラスティッキーな音になってしまうので、エアの生音(これは中高域とエンバイロメント)で全体像を作り、そして僅かにサウンドホールの中域(ピッキングニュアンス)を加えて目立たない様に薄化粧した。

 そこで早速大活躍したのが昨日届いた新兵器『WMD Utility Parametric EQ』ですよ!!コレをピエゾのチャンネルにインサートしてチャンネルEQと共に全部で 6バンドのパラメトリック EQとして細かく作り込んでみた。この EQスバラシイわ。スゲー利くのでメッチャ使える。Loが 40Hz〜1.6KHzまで、そして Midは 100Hz〜4.8KHzまで、Hiは 300Hz〜16KHzまで網羅していて、クロスしまくってるので積極的に『攻め』の EQが出来るのだ。
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 そしていよいよ本番である。演奏自体、実にダイナミクスに富んだスバラシイ演奏である。いやぁ…こりゃワタクシも腕の見せ所だ。燃えるぜぃ!
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 あれよアレよという間に本番終了。結果から言うと目論見は見事成功…だったかな。ようやく自分が納得できる音が作れた(でも本番中も細かく調整していたので、本番が終わる頃にようやく…なんだけどね(苦笑))

 ライブ修了後に箏奏者のマネージャさん?が、わざわざワタクシの所にやってきて「中国でこんなに音の良い現場は初めてですよ!」と言って下さるじゃないか(嬉)いやぁ…お世辞でもめっちゃ嬉しい。判るヒトにはちゃんと伝わったらしい。ホント苦労した甲斐があった。奏者の方も「舞台上も演りやすかったですよ!ありがとうございました」と仰ってくれた。もうね、この一言だけで一日の疲れなんかフッ飛んでしまうわ。やっぱり日々是向上心ですな。

 その後の怒濤のバラしも気分が良いから全然苦じゃ無く、鼻歌なんか歌いながらシールド巻いちゃう単細胞なワタクシ。実に単純。
 そして例によって 7Fのレストランで takaさんと反省会兼食事会をサクっと行った後は、ワタクシは地下鉄で陕西南路駅まで戻って、ガーデンホテルのジムに寄ってお風呂にユッタリ浸かって疲れを癒やす。

 …つもりだったのだが、更衣室で裸になった途端に携帯のメッセージが鳴る。何となく虫の知らせ!?の様な気がしたのでチェックしてみたら、どうやら Maeda Jazz Unitのメンバー 5人がイツモの店で飲んでるらしい「え〜、もっと早く言ってよ!」と思ったが、彼等は今日 JZ Clubに出演したらしく、ちょっと色々とハナシも聞きたかったので、慌ててザッとシャワーだけ浴びてイツモの店に走った。

 そしてまったりと音楽談義で盛り上がる。
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 一人、また一人と減って行き、結局最後に残った 3人で午前 1時半くらいまで飲んでいた。素敵な仲間達と飲む酒はホント美味しい。ワタクシはシアワセ者だホント。
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