中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

リハとPA

 土曜日、上海は快晴、気温は 18度。昨日の雨から急に気温が下がったが、今日は雲ひとつない気持ちの良い晴天だ。

 午前 10時過ぎに家を出て陆家浜路のリハスタ『Rock Shanghai』に向かった。そして例によって 2時間ほどミッチリとバンドリハーサルを行う。
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 古いスティックを捨てるタイミングってとても微妙なのだが、今日は敢えて古い 2本を選んで使ってたら見事に綺麗に折れてくれた。 このくらい美しく真っ二つに折れてくれると捨て甲斐!? が有る(笑)
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 そうそう!次のライブは 10.31。ライブハウス『the BOXX』で行われるハロウィンパーティなのでウチのバンドにぴったり?(我々悪魔工人なのでw)
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 バンドのリハーサル終了後は一旦帰宅してツインペダルやスティック類を置き、代わりにマイクやら DI類をカバンに詰め込んで慌てて家を飛び出して上海高島屋に向かった。嗚呼…忙しい。食事する暇もない。
 倉庫から機材類を運んでサクっと仕込んでトータルEQの音響チューニング。
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 本日の出演は中国伝統楽器の一つである『古琴』である。実は中国の琴と言えば『古筝』の方が有名だが、この『古琴』は響く空間が非常に狭いので古筝の比では無いくらい音が小さい楽器なのだ。
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 古筝ですらカナリ難しいのに、多分古筝の 1/3くらいの音量しか無いのだからタイヘン。そもそも PAで増幅して演奏する楽器ではないから、演奏者も付き添いの人も音色の変化に対する要求が大きいのは自明だ。なにせラウドスピーカーで鳴らして聞いた事は殆ど無い筈なので。。。

 「さぁて…どうやって音を拾おうか…」ここが腕の見せ所である。この楽器の一番大きな特徴は、古筝と違って音程を調節する『コマ』が一切無い事。つまり弦はブリッジと端っこが固定されてるだけで、音程は下の板を指で直接抑えてフレットレスベースみたいにして弾くワケだ。これだけでも如何にも『鳴らなさそう』なイメージが湧くと思うが、ボディもほぼソリッドで、中の『音が響く空間』が非常に狭いし、サウンドホールはブリッジから遠い方の(客席から見て右側の)端のボディ裏側に細長い穴が1箇所開いているだけなのだ。しかもコレは専用の木のテーブルに乗せて弾くため、隙間は 3cmくらいしかなく、マイクが入るスペースは皆無…とうイジメの様な状況。つまり、マイクで拾う場合は、この『台』から反射する音を拾ってなんぼ?という感じである。
 そんなワケで、当初はこの反射音を狙い机に向かって Beta 57を立てて反射音を拾おうかとも思ったが、実際に弾いてもらって生音を確認すると、弦を弾くのは客席から見て左側の部分なワケで、つまり弦の音は左半分から出る。それなのに右側のボディ裏の小さな穴から出てくる音がテーブルから反射した『間接音』は、丸くてボヤけた音しか聞こえないし、弦をグリッサンドする際に発生する『指が擦れる音』がヤタラ大きかったのだ(全体の音がカナリ小さい上、振動している弦は左側なので、右側からは振動していない弦の音のみ、つまりグリスの音が目立って聞こえるワケさ)
 うーむ。。。こりゃ困ったものだ。

 ま、でも中国古典楽器に関しては百戦錬磨のヲレ様である(嘘) そんな事もあろうかと、ピエゾを持ってきていたので『困った時のピエゾ頼み』って感じで、例によってピエゾをブリッジの裏側に仕込ませて貰い、これをメインに音をつくりつつ、ワンポイントステレオの NT4でエアを拾って混ぜてみた。
 驚いたのはピエゾから拾う音は非常に重低音が豊かだった事。びっくりする程低音が出ていた。つまり、ボディ自体はかなり振動してると思われる。良い具合にソリッドなのが功を奏しているのかもしれない(エレキベースと同じ理論だな) これならむしろ下のテーブル自体を直接振動させた方が良い気がしたが、そもそもその意味もあってわざわざ楽器よりも何倍も大きくて重たいテーブルを持ち込んでいるのだろう。多分実際にはこのテーブル自体が鳴ってる音も含めて『この楽器の音』なのだと思う。。。ただ、こういう風に天井の高いデパートのエントランスホールで PAで拡声して演奏するシチュエーションには明らかに不向きな楽器である。
 そんな事もあり、この NT4は大正解だった。やや左側から弦を弾く音、右側と机全体から『ふわっ』と広がる中音域、右側からグリッサンドの「キュッ」という小気味好い音、それぞれが良いバランスで拾えたし、足りない低音はピエゾが頑張ってくれたので、自分で言うのもナンだがカナリ原音に近い状態で拡声できたと思う。
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 そりゃそうと、最近ここで行われるミニライブの演奏内容を館内放送に中継して館内でも流しているらしいのだが、どうも館内放送の PA側に強烈なコンプがかかっていて、こちら側で音を出していない時(繊細な音の時)館内放送のボリュームが最大になって、ノイズが上がるのみならず、館内放送との間でフィードバックが発生してハウリ出しそうになったのでホント困った。いやぁ…AUXの面倒まで見切れないわホント。申し訳ないがこういう繊細な演奏の時は館内放送は切らせて頂いた。ただでさえ色んな事に神経使って最善を尽くしているのに、他の要因で演奏家や、直接観ているお客様が不快な思いをするのは本末転倒である。嫌な汗かいたわホント。

 終了後は気疲れでヘトヘト。ま、集まったお客さんが満足していた様なので良しとしよう。
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