中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

ユニティゲインと0dBとクリップ

 火曜日、上海は快晴、気温は 33度で今日も暑い一日。

 国慶節の連休 5日目、本日も中国は祝日である。朝 8時頃に自然起床。
 家人達はまだ寝てるので、一人でコーヒーを淹れて食パンを焼いてノンビリと朝食。自宅のコーヒーが切れかかっていたのだが、午前 9時過ぎに良い塩梅に先日ネットで買ったコーヒー豆が届いた。
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 今回はブルマン風味?である。『風味』ってトコが中国らしくて良いw ワタクシ最近はコーヒーの『酸味』に結構興味があって、中国ローカル(主に雲南)の安いコーヒー豆を買っては色々試しているのだが、理想の酸味にはまだ出会っていない。苦味はイイ感じのが多いのだが酸味はホント難しいね。
 せっかく朝に届いたので試しに直ぐ飲みたかったのだが、ウチのミルの音は巨大ゆえ豆を挽いたら家人が起きてしまうので、今は我慢がまん。午後にでも試してみよう。

 さて!今日は夜にバンドリハが有る以外は特に予定が無い。しかもウチの奥さんと息子は友達の家に遊びに行ってしまったので珍しく完全フリーな時間である。いやぁ…ちょー嬉しいぜぃ!

 そんなワケで、集中して先般購入した RME Fireface UCX II を使って色々と実験を思う存分したのは言うまでもない(基本、引き篭もりなラブリー54さい)こっから下は多分長いので、オーディオインターフェース絡みに興味ない人は読み飛ばして下さいw


 本日は UCX IIのコントロールソフトウェア『RME TotalMix FX』の謎だった部分の解明である。このオーディオインターフェース、これだけ『測定器』に近いほどの高性能を誇って(買ってから知ったのだが、コレ、アナログシンセの CV/GATE 信号まで扱えるらしい。つまり『直流電圧』の制御ですよ!交流のみならず直流電圧の値まで自信を持って正しい値を出力できると宣言しちゃうんだから恐ろしいわ…どんだけ性能に自信あるんだろ?)を誇っていながら、コントロールソフトの挙動がどうしても解せない部分があったのだ。ハードがコレだけ神経質に作られてるのなら、ソフトが曖昧な筈が無い(まぁ結果から先に言うとワタクシの勘違いで勿論『ちゃんと』してたワケだが、それは結果であって、この時点では知らない)ので先ずは実験実験!!!ワタクシは偏屈ジジイなので自分で実験した結果しか信じないのだ。嫌な客?w

 このソフト Total Mix FX は(ドイツのお国柄なのか!?)少々クセが有って、他社のドライバソフトとは使い方がちょっと違う。特にルーティングに関して最初はちょっと戸惑ったが、まぁ分かってしまえば実にシステマティックで、要するに『アウトプットありき』で作られているらしい(他社のはインプットありきで作られてるものが多い)
 まず一番下の行のアウトプットを先に選んでから上部のフェーダー類を調整する仕組みになっているので、要するにアウトプットの数だけサブミックスが作れる仕組みなのだ。コレはコレで便利である。
 ただ、言ってみれば本体内部に『必ずデジタルミキサーを一台挟んでいる』のと同義なので、ホンキで Pure Audio をトコトン追求するのならば、余計な処理は少ないに越した事は無いワケさ。なので色々探してみたら、一応このミキサーをバイパスする術も一応準備されてはいる。
 トップメニュー →『Options』→『Operational Mode』で、
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 開くと以下の様に、フルモードと DAWモードを選択する事ができる。
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 ところが、コレを選択してもルーティングや FX等の細かいパラメーターが消えるだけで、同じ様なミキサー画面が表示されるので、やはり多少はこの内部ミキサーを通るのだと思われる。でも逆に言えば、このミキサーは音質に全く影響を与えない程優秀で、基本的にユニティゲイン&エフェクトバイパスならば『全く色付けをしない』という自信の現れでも有る?…と言えなくも無い。 そんなワケで、ここは RME社の自信を信じる事として、フルモードで実験開始。

 ワタクシが一番解せなかった点は、Mac内部の音声信号 BUSとマスターmixの値の差だった。Mac内部の音声信号出力は Software Playbackグループの Ch1/2にアサインされているのだが、ここのピーク表示は一切点灯しないのに、マスターは赤が点灯する点である。
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 フツーに iTunesを使って音楽をかけるだけで、マスターBUSは常に赤が点灯しっぱなしなのだ。まぁ他社のI/Fを使っても同様の事は発生するのだが、どうも頻度が高い気がする。

 厳密に言うと、デジタルの領域で 0dBを『スケールの最大値』と取るか『クリップ』と判断するかはシチュエーションによって解釈が異なるワケで、その辺もこのソフトは良く考えられていて、サンプル単位で『何サンプル連続で音が続いたら』クリップランプを点灯させるか? という機能まで付いている親切設計だったりする。
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 一般的に『一度だけ』天辺を突くだけでは歪みにはならない(なりえない)ので、それは単純に最大音量の点であって『クリップでは無い』と言い切って良いだろう。ただし、2-3度連続して天辺突いたらそれは明らかに波形が平らになるので、クリップ(歪み)と判断して良いと思う。(実際3サンプルくらいじゃ全く歪みに感じないけどねw)
 ま、何はともあれ、そこまでシビアな判断まで設定できるソフトなのに、なぜ『出力』は赤が点灯して『入力』は赤が点灯しないのか? 実に謎である。勿論マスターフェーダーを 1dBくらい下げれば赤は消える(メーターはポストフェーダー)し、逆に言うと Software playbackサイドのフェーダを下げても同様である。
 しかし仮にマスターフェーダをを下げて赤が消えても、その直前で既に歪んでいたら歪んだまま小さくなるからメーターだけ下がっても意味が無いでは無いか。。。勿論ヘッドルームを多分カナリ大きめに準備してはあるだろうが、なんだろ?この気持ち悪さ。

 そして、あまりに解せないので「この内部DSPミキサーの中で余計な処理が挟まってるじゃね?」と思って、単純にインプット側に iPhoneを突っ込んでオシレーター Appでピンクノイズを発生させ、0dBで突っ込んでみた。
 すると! 入力(Analog 1/2)と出力(Master 1/2)は『ピッタリ』同じ値で表示され、それこそ 0.1dB単位で音量を上げ下げしてみても、赤が点いたり消えたりのタイミングが完全にシンクロしたのだよ(驚) 1KHzの正弦波でも試してみたが結果は同じ。「え〜?…っつー事はこの内部ミキサーのどこかに余計な処理が入ってるワケじゃないって事?」と思わず独り言を叫んでしまったのは言うまでもない。

 ま、でもそりゃそうだ。こーんな大袈裟なまでに神経質な機械を作る RME社である。そんな誰でも判る様な愚かなバグを含んだままリリースしないだろう。

 そんなワケでその後も色々と調査してみる。…と、ある事に気付いた。Logicや ProToolsを立ち上げて実験すると、美しいくらいに入力と出力は『全く同じ』値を示すのだ。ソフト側のアウトプットメーターとこの TotalMix FXのメーターは全く同じ dB値を表示している。最終段にトータルコンプで突いて 0dBを超える様にすれば、必ず全く同じタイミングで赤が点く。
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 ここで、ある事に気付いた。 …あ、あれ? 入出力の表示値は全く同じだけど、頭突いた際もやはり入力フェーダーの上には赤は点かないじゃないか! でもアウトプットマスターフェーダーに表示される dB値と赤が点くタイミングは全く同じだ。点灯するのはアウトプットメーターの上のみ。

 なるほど〜

 そうなのだ…TotalMix FXは、どうやら仕様的に『SOFTWARE PLAYBACK』側チャンネルは、どんだけ頭を突いても赤は点灯しない仕様らしい。まぁ考えてみたらソフトウェアプレイバックはデジタル信号なので 0dB以上は入って来ようが無いものね。しかも昨今の音圧を上げまくったソース的には 0dB付近でチロチロしてるのが多いのでイチイチ赤を点灯させると常に点きっぱなしだし、そうするとホントに注意しなければイケナイ入力オーバーや出力時の歪み等の『赤』を見逃してしまう可能性もあるから、「あくまで注意すべきクリップ信号」のみ赤で表示させる仕組みなのかもしれない。

 しかし、ココで新たな疑問が湧いて来た。では、なぜ iTunseの時は入力フェーダーを 0.7dBくらい下げないと入力と出力が同じ値を示さないのか?という点だ。

 そして上の画面に戻ってびっくり!
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 あれ??? マイナス符号がない!!! コレそもそも 0dBを超えてるじゃん!!!!!! え?どういう事? Macの内部って 0dB以上のデジタル音声信号をでソフト間でやりとりできる?って事??? うそ〜!!
 マジか! そもそも入力に 0dB以上の信号が入って来ていたのだよ。そりゃ出力側は赤が点くに決まってるわ。

 なるほど〜。どうやらコレ、iTunes側のバグ?というか仕様?だったらしい。 良く考えてみると、mp3のサンプリング周波数は曲によって異なるし、OS側で一々マスタークロックを 44.1KHz〜48KHzに切り替えているとは思えない(現にインターフェース側では曲に合わせて周波数が切り替わったりはしない)と言うことは、CoreAudio側で何かのドライバ的なソフトが吸収しているワケで、つまりはシーケンサーみたいに完全なるハンドシェイクでオリジナルのピュアデータをそのまま再生しているワケではない…っつー事だな。
 多分 CoreAudioのミキサーにヘッドルームを大きめにとってあるのだろう。じゃないと iTunesでフルテンで鳴ってる最中に OS側が通知メッセージ音を鳴らしたら歪んでしまうものね。その辺も考慮されて、大きめのヘッドルームが準備されているのだろう。ゆえに iTunesや内部の他のアプリは、やろうと思えば 0dB以上の音量で再生ができてしまうのだと思う。
 因みに、ワタクシの自宅の Mojave10.14.6 + iTunes12.9.5.5 だと、iTunes側の音量フェーダーを最大にすると常に +0.7dBくらいの音量で再生してしまう様だ。

 なので、みなさんも、外部インターフェースを繋いでる方はココ↓は最大にしない方が良いかもw
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 何気に(まぁ +0.7dBくらいなので分からないとは思うが)ほんの少し歪んだ音を気付かずに毎日聴いてるカモよ? ワタクシはコレに気付いてから、今は iTunes(Music) App内で 1目盛(コマンド+↓)だけ下げた状態で聴いています。そうすると何となく丁度良い塩梅で頭突かずにフルスケールでメーター振ってるのでw

 てな感じで『さすが RME』という結論に達しました…とさw 気づけば 8時間くらいぶっ通しで調べていた。

 ちなみに、本体の超小型液晶ディスプレイに表示されるメーターは、入力音量に応じてメーターの棒自体が 緑→黄色→赤と変化するのだが、コレは敢えて敏感に反応する様に出来てるらしく、-1dBを超えた辺りから既に赤色で表示される。(TotalMix FX内でのピーク表示とは異なり、色分けはきっと『レベルエリア』という考え方なのだろう)
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 ま、確かに録音時や生放送配信時等は、メーターフルスケールで 0dBギリギリまで使う事は無いので、実用レンジを考えて早めにレベルオーバーの予兆を教えてくれる仕組みなのだろう。プロシューマー用途としては親切設計だわな。(こんな小さなメーターを四六時中見てるワケには行かないので)


 さて!謎が解けて結構清々しい気分で、夜 18時過ぎに家を出て陆家浜路のリハスタ Rock Shanghaiに向かった。本日は『黑莉莉(Hey Lily)』のリハを 3時間。
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 本日は久々の 3スタ。「あれ?黑莉莉ってテンポラリで前回のライブまでのサポートじゃなかったの?」という声が聞こえてきそうだが、コレは話せば長くなるので、また期を改めて!(苦笑)

 そんな国慶節連休の 5日目が暮れていく。
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