中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

SSL FUSIONファーストインプレッション

 水曜日、上海は曇り。気温は 7度。

 朝 7時に五十肩の痛みで起床。二度寝しようかチョット迷ったが、微妙な時間帯だったので起きる事にした。そしてノンビリと Radikoで J-Waveなんか聴きながらイツモの朝のルーチンを経て午前 9時前に寮を出て徒歩 10分通勤にてオフィスへ。
 オフィス到着後は直ぐに自室スタジオに籠もって(自分の仕事は放っぽらかして)朝一から昨日ワタクシの部屋に届いたばかりの SSL FUSIONの研究である。

 今日は、ほぼ丸一日?仕事もせずにコレで遊んでいた感は否めないが、色々見えてきた事が有るのでファーストインプレッションをば。(長くなると思うので興味ない人は読み飛ばして下さいなw)

 このアウトボード、勿論ワタクシが個人で買ったワケではない。ウチの会社の同僚が申請して、会社資産として買ったのだが、どうやら彼はイマイチ肌に合わなかったらしく譲ってくれたのだ。なのでワタクシ的には完全に『予備知識ゼロ』で、マニュアルも見ずにいきなり弄り倒してるので、以下のインプレッションはカナリ個人的な感想(肌感覚)である。一般的に言われてる感想とはチョット異なるかもしれないが、その辺はご容赦頂きたい。

 まず、火を入れて一番最初に感動したのは『EQ』である。
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 このEQ、『VIOLET EQ』なんて小洒落た名前が付いているが、弄ってみるとすごく良い!かなり好きな音。ハイもローもカナリ思い切ってハイエンドとローエンドの大胆に高い(低い)周波数なのだが、Qカーブが秀逸で、凄く自然なのに良いツボを突いて来る。これってシェルビングなのかなぁ?良く分からんが、特にローが良い!アナログEQならではの『腰』を感じた。空気全体を『ブワッ』って振動させる感じ?キックなんか『風圧』を感じるくらいでカナリ感動した。

 次に良かったのは『STEREO IMAGE』だな。
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 これ系はプラグインで結構有るので、大して(全く)期待してなかったのだが、2つあるツマミの左側の『SPACE』ツマミが良い!! 右側の WIDTHツマミはフツーに Mid-Side処理してるだけなのでプラグインとあまり大差ないんだけど、左側の『SPACE』ツマミが実に面白い!!!ちょっと未経験なサウンド。何というかスタジオの『部屋鳴り』みたいな部分が増えるのだ(特に低域ね!)どういう仕組みなのかさっぱり分からないのだが、ルームリバーブみたいなものが掛かったソースは顕著に現れる。
 すげー『部屋』感w。ドラムBUSにかけると、皮の振動が目に見える様で凄いよ。特にキックとフロアね。不肖ワタクシ一応!? ドラマーゆえ週に何度か生ドラムを叩いてるので良く判るのだが、これ上げるとすげーリアルになる!なんかスタジオ内に居るみたい?だ。言葉に現すのは難しいのだが、単純にルームマイクのフェーダーを上げたのとはチョット違う、何ともスペイシーな感覚である(80年代後半に、初めて BBEというエキサイターを弄った時の様な【新しい】感覚?だ)ホントどういう仕組みなんだろ?
 ツマミを上げすぎると位相がズレた様な音になるので、多分何らかの方法で位相を弄ってるのだと思われるが、実に面白い。コレ寧ろ積極的にエフェクティブに使った方が面白いかも。色々使い方を考えるとワクワクする。

 そして、逆に、一番期待していた割に「使い方が難しいな」と感じたのは、『VINTAGE DRIVE』の機能だな。
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 コレ、SSLというブランドから想像していたより、ずっと(カナリ!?)歪むのだ(苦笑) まぁ インプットの設定にもよるのだろうが、INPUT TRIMがユニティ位置(センタークリックの「0」位置)で、もちろんクリップしない程度のインプット設定なのに、両方のノブを一番下げた(左に回した)状態で、単純に INスイッチを押すだけでカナリ音圧が上がる。
 左側の DRIVEツマミが歪みの深さで、右側の『DENSITY』ツマミの角度で『歪み方』が変わる。この DENSITYは、ゼロ(min側)の方が寧ろ派手に歪むかな。右に回していくと、何とも不思議な?上の方の倍音が増えてく感じの歪みに変わっていく。なんだろう?真空管のギターアンプヘッドに小型のキャビを繋いで鳴らしてる様なクランチ感?みたいな雰囲気が出て来る。低域と高域はそのまま中域だけ歪む感じである。逆に左側に回すとトランジスタのオーバードライブをかけた様に低域から結構『下品に!?』歪むのだ。
 もちろん、ドライブを派手に上げなければ(2時くらいの位置以下なら)歪みが気になる事はないよ。真ん中くらいまでならば良い感じに音圧が上がって、ProTools側のピークメーター読みはさほど変わらないのに、音量(LUFS)だけ 1.5倍くらい上がった様な?効果が出て倍音が増えて音が分厚くなるので、基本的にはこうやって『味付け程度』で使うのが正しいのだろう、きっと。
 ただコレ、少々気になるのは、ドライブツマミを絞り切った方が S/Nが悪いのだ。何でだろ?実に不思議。普通逆じゃん??? しかしこの機器は、ドライブを絞り切った方がノイズが乗るのだ。なので、多分ツマミの量を減らすために、ドライブを上げると内部でゲインが自動的に下がっていく仕組みなんじゃないかなぁ? なんて勘ぐっている。そもそもゲインツマミが無いので、インプットTRIMをうまく絞っていけば良い塩梅が探せるのかもね(今日は試せてないけど)
 あ、ちなみにノイズだけど、もちろん通常音領域では全然ノイズは気になりませんよ! 上記の意見は、ちょっと意地悪してヘッドフォンのボリュームを最大にして S/Nを調べた時に気付いただけである。なので、もちろん通常使用範囲内では全体的に非常に S/Nが良い機材である事は確かだ。(一応念のため!)

 因みにウチの同僚はこのVintage Drive機能が、想像していたのと違ってガッカリしたらしく、故にワタクシに譲ってくれたらしい。そんなワケで、ちょっと好き嫌いは別れそうな機能ではある。サミングアンプ的なナチュラルな倍音を求めてる人はかなりビックリすると思う(かくいうワタクシもかなり驚いた 笑)
 でも逆に言うと、エフェクティブに使う分にはカナリ『使える』と思う。Master BUSではなく、ドラムBUSにコレを挿してこのドライブを上げると超絶良い音で音がガツンと前に出てくるのでメッチャ感動した。コンプとはまた違った味で凄く『ホット』になる。コンプってアタックやリリース感がどうしても気になってしまうが、コレは全然『戻ってくる時間』を感じない、非常にナチュラルに全体が前にグッと寄ってくる感じがイイ!カナリ好きである。スネアなんて自然なトーンのまま、とても太い音になるしね。
 なので、コレはサチュレーターというより寧ろオーバードライブと割り切った方が良いかもねw

 そして次に『HF COMP』の機能。
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 これはイマドキのツンツンに上がったソース等からパルス系のいわゆる『痛い』音域を自然に丸めてくれるバンドパスコンプの様だ。サラっと上品になるので、特にゲームの BGM等のマスタリングで(効果音やボイスの邪魔にならない様に)あまりトガった楽器を前面に出したく無い場合は重宝しそうである。

 最後に、ワタクシが個人的に最も期待していた『TRANS』ボタンについて。
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 これはホントにリアルにトランスを通しているのか、あるいはそれをシミュレーションする様な機能がトランジスタ回路で構成されてるのか謎だが、良い感じに非常にナチュラルに中低域に倍音が付いて音が『太く』なる。特にベースとかね。あと、ハイも何と無く艶が出る?気がしないでもないけど気のせいかもしれないw。ちなみに中域は殆ど全く変わらない気がするw(変わってるのかもしれないけど、ワタクシの耳では分からなかった)
 マスターBUSやステムトラック等、有る程度『音圧が一定』のトラックに挿すと良い感じに『オールド感』が出て『暖かく』なるが、ドラムBUS等、アタックの強いトラックに直接挿すと、キック等の重低音が直ぐにクリップするから注意が必要。インプットもアウトプットも全く赤が付かない(メーター的には余裕が有る状態)なのに、ほんとに分かりやすく「ブリっ!」と汚く歪むのだ。これは意外だった。
 しかも、ちょっと突っ込むと、キックが歪むと同時に 80Hzくらいでハイパスかけたみたいに重低音だけが下がる事があった。これは多分この回路の特性なのかもしれない。最初何が歪んでるのか分からなくて壊れたかと思ったが、フツーのソース(既に有る程度コンプ感が有ってアタックが目立たないトラック)だと下から上までちゃんと鳴るので、そういう仕様なのだと思う。
 なので、低域のアタックが強いトラックや、重低音重視のトラックでこのスイッチを入れる場合は、全体の入力ゲインをカナリ下げた方が良いと思われる。このトランススイッチをオフれば、結構突っ込んでも重低音まで綺麗に再生されるので、やはりこの回路自体の仕様なのだろう。
 きっとこのスイッチは、ある程度音圧調整が済んだ後、最終段の MasterBUSに挿す場合等、最終的な味付けに使う用途が適している気がする。柔らかくなって自然なアナログ感は確かに出るし、突然の重低音のアタックさえ注意すれば勿論、周波数特性的に重低音から最高音まで綺麗に再生されるので!(S/Nも良いしね)

 …てな感じで、長くなったがファーストインプレッションでした! 総括すると、音はカナリ良いし、今までに無いタイプの面白いアウトボードである。
 ま、何にせよ奥が深く、ワタクシもまだ今日一日しか弄ってないので、まだまだ色々研究のしがいがありそうだ。
 また何か気付いたら後日改めてココに書こうと思う。
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