中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

労働節の連休スタートと Dolby Atmos(ロックダウン 30日目)

 土曜日、上海は曇り、気温は 16度!!!今日はメッチャ寒かった〜。もう四月も最終日ですよ?ナンデスカコレハ。

 朝 6時くらいに一度目覚めてトイレだけ行って、またベッドに戻って二度寝。見事にぐっすり寝て午前 8時に目覚ましの音で起床。最近ほんと面白いくらいに良く眠れる。良い傾向だ。

 ざっと顔を洗って着替えて、抗原検査のスタッフを待ち、朝 8時半から抗原検査。もちろん本日も陰性。
 イツモ通り社員証と一緒に写真を撮って社内 DBにアップして完了。

 そして朝 9時に部屋を出て社食棟まで歩いて朝食を受け取りに行く。寮生活だと食事の時間が厳格に決まっているので、毎日の繰り返しが、ホントに判で押した様に『同じ』になるからツマラん。

 「少しでも生活に変化を!」って感じで、帰りに普段と違う道を歩いたら、お!これは!… ネコさまの足跡じゃないか? ずーっと続いていたので、あとを辿ってみた。

 想像よりもずっと長く足跡が続いていて、20mくらいかなぁ?この草原で消えていた。

 なんだかネコさまがここまで連れてきてくれた様な?不思議な気分。でもちょっと嬉しい。

 自室に戻って軽く朝食をとった後は、すっかりヤル事が無くなってしまった。そうなのだ。本日から中国は『劳动节』の5連休なのだよ。
 しかし外は相変わらずのロックダウン。外に呑みにイケナイし、バンドのリハだって出来やしない。…って事はヤる事がホントに無いのよねん。はふーん。

 3分ほど考えて「せっかくの機会なので、ちょっと何か『身』になる事をしよう」と思い立ち、今まで『なんとなく』しか理解していなかった『DOLBY ATMOS』の事をチョット本腰入れてしっかり調べてみる事にした。ちょうど先日 ProTools Studioも ATMOSに正式に対応した?というハナシだったし、良い機会である。

 今までは ATMOSって単なる 5.1chとか 7.1chとかのサラウンドの延長に有るものだとばかり思っていたが、実はどうやら違うっぽい。

 まず、ProTools上で新規トラックを作る際、今までは MONOと STEREOの二つしか無かったのに、突然これだけ増えていた。

 フツーにLCRはセンターを加えた3ch、QuadはLR+リアLRの4chだろう。そして5.0はセンターLCR+リアLRでサブ無しって事だろうな。そして、5.1はサブあり。7.0と7.1は同様に左右にもう一本ずつLRを加えたサラウンドだ…って事は容易に想像つく。
 しかし次からの 7.0.2とか 7.1.2って何だ??? その次の1st Order Ambisonicsとかも全然わからん。

 ま、何はともあれ実験実験!って事でまずはとても馴染みのある 5.1chの新規オーディオトラックを作ってみた。

 すると一本のトラックに五本のオーディオファイルが並んだ状態のトラックが作成されたので、せっかくなのでちょっと録音してみた。
 とりあえず 1chにギター、 2chにベースが繋がっていたので、そのまま適当にチャラチャラ鳴らしながら同時に録音してみたのだが、フツーに録れた。

 録音されたフォルダを確認したら、5本のMONOファイルが作成されていた。つまりインターリーブのマルチWAVファイルでは無い…って事だな。

 しかし、なぜかこのトラックには PAN情報をコントロールするつまみが一つもない。どうやら、5本バラバラにそれぞれのトラックがMONOで合わさったグループトラックみたいなもの…というワケでは無いらしく、5.1マルチのトラックは、それ自体が既に『LCR+リアLR+サブ』がそれぞれ完全に独立した(既にマスタリングされた)データが並んでるだけ…なので、いちいちそれらを更にトラック上でPANするのはナンセンスってワケだな?きっと。

 でもマルチMONOでデータが作成されていた…って事はきっとバラバラにする事ができる筈でメニューを探してみたら有った。

 せっかくなのでグループフォルダにしてみた。そしたらちゃんと PANが弄れる様になったじゃないか。なるほどね〜。

 ま、本末転倒ではあるが、実験なのでヨシとしよう。

 因みに、バウンスするとどうなるのか実験してみたら、インターリーブのマルチwavファイルが作成された。すげー、Wavフォーマットって1ファイルに 2ch以上のマルチトラック入れる事できるんだね。知らなかったよw

 …とまぁ色々遊んでたらあっという間にお昼である。

 サクっとお弁当を受け取りに社食等まで走り、帰宅してからは、せっかくの休みなので、お昼からワイン片手に優雅にお弁当を頂く(嬉) うーん。シアワセ!

 良い感じに気持ちよくなった所で、ATMOSの研究に戻る。

 色々考えてみたが、コレって単なるサラウンドで、今までだってLogic等にはフツーに備わっていた機能じゃないか。。。
 「皆が騒いでる ATMOSって一体何がスゴいの? 今までの 5.1や7.1や9.1のサラウンドと一体何が違うのサ!」と大きめな声で独り言を呟いた後は、ネット捜索隊に早変わり。午後はずーっと検索しまくって色々調べてみたが、どの記事も結構曖昧で、今一つピンと来ない。

 そして意地になって調べていたらようやく何となく分かってきた事がある。きっとワタクシみたいに結論を急ぐヒトがこの記事を見つけるかもしれないので、先に超絶乱暴に結論を言ってしまおう。

 DOLBY ATMOSというのは、通常の 7.1chのサラウンドに加え、天井に 2あるいは4つの追加スピーカーを加えたシステム…では『無い!』ですよ!

 殆どの記事が上記の様な書き方をしているので今までの多チャンネルサラウンドと何ら変わらないじゃないか…という誤解を生むし、分かりにくくしてるんだよ。

 もちろん上記説明は『ある意味』合ってるので質が悪い。つまりハードウェアの『見た目』上のスピーカー数や配置は 7.1+2(4)という事なのだが、単純に天井にLR2つとか前後LRで4つのスピーカーを増やしただけじゃないのだよ。

 結論を先に書くと、ATMOSは【メタ情報として位置情報を持ったオーディオトラックを、7.1+2『とは別に』複数(最大118本)追加で存在させる事ができる規格】の様だ。 

 今までのサラウンドに加え、オブジェクトと呼ばれる『(時間軸に沿って移動可能な)座標データを持ったオーディオデータ』を追加した規格っぽい。

 つまり今までのサラウンド規格は『そのまま』残ってるワケ。ATMOSでは、元々ある『LCR+リアLR+Sub』等のオーディオデータは『Bed』と呼ばれ、今までと同様に 5.1とか 7.1とか、それぞれが固定トラックとして扱われ、それぞれの対応するスピーカーから再生される。

 で、一番大きな違いは、後から追加になった『オブジェクト』と呼ばれる【ベクトル(座標)付きのオーディオデータ】である。これはスピーカーの数がどれだけ増えても、再生時にハードウェア側でリアルタイムにデコードして、適切な位置にマッピングしてくれるらしい。

 例えば単純なステレオの 2チャンネルのシステムで例えると、映画館等で、スピーカーが L側がフルレンジ 5台を縦に積み上げ、R側もフルレンジ5つを縦に積み上げてセッティングされてるとすると、フツーは Lチャンネル側の5つは全部同じ音が出るワケさ。それこそ上記で言う所の『Bed』のL-chの音が『そのまま』音の壁となって5つ全部のスピーカーから『面で』出力される。

 ところが【座標を持ったオブジェクト】トラックは、メタ情報として x-y-z の座標みたいなモノが入っていて、それがハードウェア上でリアルタイムにデコーディングされて位置が決まるので、例えば L-chの5つのウチの『上から2番目だけ』とか『たった一つ』のスピーカーだけをピンポイントで鳴らす事だって出来るワケさ。

 つまり、映画で『効果音やセリフだけ』をホントに『点』で表現する事ができるワケ。しかも、それを映像に合わせて上下左右にグニャグニャ動かす事ができるシステムらしい。これナニゲに凄く無い?

 つまりBGMは今までの様にBedトラックから『面』で包み込む様に鳴らしつつ、セリフやら効果音やらは『点』で、より『カッチリした座標で』表現ができるワケさ。何なら銃弾の動きやら、刀を振り下ろした風切音などは、まさに弾道の動きや刀の軌跡に合わせて鳴らす事だってできるわけ。スクリーンの裏には非常に多くのスピーカーが積まれているからね。
 もし仮にスクリーン上の音源の発生源の裏側に、丁度良い具合にスピーカーが無かったとしても、そこに最も近いほんの数個のスピーカー「のみ」が鳴るから、今までよりはずっと『点』に近い音源になるワケさ。天井のスピーカーだって複数台あれば、クルマの天井を打つ雨音だって真上から超リアルにパラパラと聴かせる事もできるだろう。(やろうと思えば雨粒一粒一粒をオブジェクト化できるからね)

 そして、これがまぁ自由度が高すぎるので、余計ヤヤコシくしてるのだが、この『オブジェクト』トラックは、効果音のみならず音楽にだって使えてしまうらしい。つまり Bedを一切使わずに全てオブジェクトで音楽ファイルを作る事もできるらしい。

 これは何を意味するか?というと、オブジェクトはリアルタイムにその場で『その環境に合わせて』ハードウェアがデコードするワケじゃん?だから作家や制作側はリスナーの再生環境を気にしなくて良くなる訳さ。
 何なら、フルオーケストラ 50数人が、全て『オブジェクト』トラックとして自分の立ち位置の座標さえ持っていれば、ミックスの時点でエンジニアが PANに悩まされる事なく、どんなハードウェア環境でも目の前に 50数人並んだ様な音場を作る事が(理論上)できるわけ。
 素晴らしいホールの残響が欲しければ、そのホールの一番後ろに立てたマイクを複数箇所にそれぞれ『座標付きで』設置して収録し、オブジェクトデータとして再生すれば、自宅に居ながらにして巨大なホールの響きをほぼ完璧なシミュレーションができてしまうよね?(驚)しかも z軸(距離)まで座標取ってるからディレイの心配も皆無だ。

 で、実はココからが ATMOSの最も素晴らしい利点なのだけど、ATMOSは『リスナーの環境』に応じて『再生時に』音源の位置決めをするってトコ。

 つまり、例えば映画館の様に全部で 100個くらいあるスピーカーの中で聴けば、右側 45度くらいから出る音は、ほんとにそこに楽器が置いてあるかのごとく、その位置にあるスピーカーから音が発生する。。。というのは今までの説明で容易に理解できると思うが、これって逆に言えば、再生時に『ハードウェアが』計算して位置を決めてるので、どんなに少ないスピーカー構成でも、その環境に応じてハードが補完してくれるから、ちゃんと45度の再現が可能らしい。

 つまり、左右でたった 2つしかないヘッドフォンでも、再生装置が計算して右側45度から鳴る様にシミュレーションして作ってくれるから、ほぼ正確に!? 同様の 45度を体感する事ができちゃう…という事だそうな。何なら『真上』とかも(驚)ま、理論上は…ね。

 まぁサスガに 2chはちょっと極端にせよ、例えば家庭用シアター等の小規模システムでは、右のスピーカーと真ん中のスピーカーの間の『スピーカーがない場所』が存在するワケじゃん? でも、もしそこにオブジェクト座標が有った場合は、あたかもその位置に音源が有るかの様に『ハードウェアが』リアルタイムでデコード〜自動配置してくれる。(今までは『制作時に』エンジニアが決め打ちした内容を、『再生時』にハードウェアが再現する風に変わった…という事。つまり再生場所にあるスピーカーの数によって変化する音場を、作る側が気にしなくて良くなったワケ)

 これが、Appleが iPhone と AirPod Proに搭載したATMOSの『環境オーディオ』の正体だったのだよ。音源自体に座標が入ってるから、自分の頭を動かしても、ちゃんと元の位置から聴こえる風に『再生装置が』補完してくれるワケ。
 さすがに360度の座標情報をたった2つのスピーカー(イヤフォン)で表現するには無理があるので、デコードの時点での誤差がとても大きいから、位相がズレた様な音になっちゃうのも納得できるよね?(個人的にはこの位相のズレが気になって気持ち悪いので、環境オーディオは常にOFFしてるけどね)

 各各然然、ATMOSはヘッドフォンでは(2chでは)「なんちゃって」臨場感しか楽しめないと(個人的には)思う。真髄はやっぱりマルチスピーカーですよ。7.1.2とかこれから一般家庭に普及し始めたら凄い事になる!? 気がしないでもない。

 噂によると、Apple Musicにリリースされてる ATMOS対応の音楽データは、今まで LR 2mixだったトラックを新たに再度トラックダウンをして、ある楽器とか効果音等のみを「オブジェクト」として抽出して真後ろにPANしたり?等、今までにない効果を狙ったものが多いらしい。なので、基本的に今までの Bedトラック+アルファって感じで作られている様だ。

 いやぁ…連休初日から色々と勉強になったよ。

 で、早速 ProTools上で、どうやればこの位置情報付きオブジェクトオーディオファイルが作れるのか?調べてみたら、これは専用のプラグインが必要な様だ。まだまだ調査が足りないのでこの部分は後日また!

注)これは筆者がネットを中心に一日で調べた情報を中心に、筆者が得た解釈をわかりやすく纏めたものですので、正確性は欠いてる可能性が高いです。もし間違いや勘違いを発見した方はこっそり教えてくださいw
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