中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

交渉の文化(Bass購入)

 土曜日、広州は晴れ、気温は 34度。

 今日は休日なので昨夜は寝る前に携帯類をベッドルームに持ち込まず、全部別の部屋に置いてノンビリ朝寝しようと思ったのに、何故かイツモと同じ 6時半に目覚めてしまう…という、相変わらず融通が効かないこの身体よ。

 でも今日は朝からソワソワ?ワクワク?なのだw。まぁ結論を先に行ってしまうと先日買ったベースが届く日なのだが、今回はちょっとカナリ冒険に近い買い方をしたので、実際に手にするまでは一瞬たりとも気が抜けなかったりするワケさ。
 今回は、自分的に 18年という長い中国在住歴の中で得たノウハウを最大限生かした!? 壮大な実験を兼ねている。…というと大袈裟だが、簡単に言うと要するにタオバオ等のシステムを使った正規ルートではなく、中国人が大好きな『交渉』によって、どこまで値引かせる事ができるか?という実験である(笑)

 まず大前提として、竿モノの楽器をネットで買う際に最も重要な事だが、受け取る際は可能な限り自分が在宅の時に『本人が』自ら受け取り、宅配の兄ちゃんを待たせて、運搬時にぶつけたりしていないかを確認する必要があるワケさ。(高価な楽器なら尚更ね!)中国は大分先進的になってきたとは言え、業者によっては荷物の扱いが雑だったりするのだ。

 特に、常に一番ストレスがかかるネック周りは確認必須である。運送時に一度でも派手にぶつけたり倒したりしていたら後々影響が出て来る事があるから絶対受け取ってはイケナイ。パッと見で問題無さげでも、ちょっと軽くヒネってみるとヒビが入ってたりする事が有るから特にフィンガーボードの剥離や、トラスロッド周りにヒビが無いか確認、そして Rがついてるヘッドの首の部分と、ボディとネックの接合部分は入念にチェックが必要である。逆に言うとネック周りが問題なければ、他は全く気にする必要は無いと言っても過言では無い。

 …という大前提があって、そもそも今回の交渉はココから始まったワケさw

 まず、タオバオで、ワタクシが狙ってる楽器を扱ってる数店を選んで、値段や評価や場所を確認。これだけで数日かかった。
 そして既に水曜くらいになってしまっていたので、今週末に自分が受け取れるか否かの交渉から入る。タオバオの業者は在庫を自分で抱えずに協力関係にある別の店と倉庫を共有していたりするからだ。ここで2軒くらいフルイから落ちる。
 
 そして残った店と、今度は価格や条件の交渉である。暫くタオバオのチャット上で値引き以外の部分の質問等を文字でやりとりをし、レスポンスの速さや態度(客目線で商売しているか?)を確認する。
 イツモ思うのだが、タオバオの販売員は日本の 90年代の中古車販売業者に似てるかもしれない。昔は日本でも特に輸入車の業者は、結構酷い態度の人間(騙して高く売りつける)が多かったので、そういう意味では当時の経験が生きているカモw)

 そして、なるべく時間をかけて(フツーの人はだんだん面倒になってくるので性格が出やすい)暫くやりとりをした後、「たぶん問題無いだろう」と見切った時点で WeChatのアドレスを交換する。タオバオのシステムは全部管理されていてログが残るので店側もあまり思い切った事は言えない。あまり大胆に引いてしまうと不当な価格を提示している事になるからね。(というか積極的な業者は、向こうから「交換しましょう」と必ず言って来る)

 WeChatでアドレスを交換できたら、あとは具体的な交渉に入る。此処で今回カナリの勇気を絞ってトライしてみたのが、タオバオを通さずにこの業者から『直接』購入する事。これはもう証拠も何も残らないので騙される確率はカナリ高いので、最悪全損しても良い覚悟が無いとできないのだが、今回は敢えて提案してみた。実は業者にしてみても、タオバオ側に払う手数料分が利益になるなら、できれば通したく無い…と考えているのだ。単価が高い物なら尚更ね。

 この時点でこちら側は『買う気マンマン』のオーラ(態度)を出せば、後は面白いくらい下がっていくワケさ。楽器屋の兄ちゃんというのは往々にして自分もバンドを演っていたりするので「できればこの週末のライブで使いたいんです!」とか色々とそういう会話を続けると、徐々に「しゃーないなぁ」って雰囲気になていくモノなのだ。これも結構長い事、中国人と一緒にバンドを演っていたからこそ知った事なんだけどね。意外と『自分が認めた』バンドマン同志は仲間意識が強いから話が早いのだ(WeChatが繋がった時点で相手もコチラのモーメンツとか動画を見る事が出来るから、自分がどれくらいのスキルかをアピールできるから、これも積極利用したのは言うまでもない。モーメンツやアップされてる動画を見て、単なる金持ちのボンボンだったら絶対値引かなくても、ある程度『ちゃんと音楽演ってる人』と分かれば急に仲間意識を感じてくれて協力してくれるイカす兄ちゃんが多いのだよ。特にバンドマンはね)

 そんなワケで、結果から先に言うと、オリジナルの表示金額からなんと 1,440元もの値引きに成功した、今の日本円換算で 28,800円である。3万近くも値引きできたなんて自分でもびっくり。(まぁ『おまけ』で付けてセット販売していたスタンドやらチューナーやら弦やら全部抜いて本体のみの価格だけどね)

 ただ、問題は本当に『ちゃんと』『本物が』『無事に無傷で』『指定した期日に』届くか? と言う部分である。正直今までの長いチャットのやりとりでワタクシは完全に彼を信用していたし、そんなに心配はしていなかったが、それでもやはりブツを手にするまでは不安である。

 そして本日、じゃーん!

 サクッと開けて中を確認。

 この時点でも(写真を撮りながら)まだ「中に大根とかが入ってたらどうしよう?」という不安は拭えてなかったのだよ。

 今回は顺丰ではなく德邦だったのでちょっと心配だったのだが、宅配の兄ちゃんもチェックが終わるまでちゃんと文句言わずに待っていてくれた。

 敢えてネック等にテンションを与えて捻ったりしながらチェックしてるワタクシを不思議そうな顔して見ていたが、ワタクシが満足げに満面の笑顔で「ありがとう!大丈夫だ!」と言ったら彼も嬉しそうな顔して帰っていった。

 いやぁ…実物を見ると、写真以上の美しさに息を飲む。ネット上でこのベースを知ってから、寄木細工の様なボディに目が釘付けで殆ど一目惚れだったのだw
 購入したのは Ibanez SR premium (2022限定モデル)である。

 これ、トコトン変わってて、Flamed Maple+Bubinga(top) /Bubinga / Ash / Bubinga / Flamed Maple+Bubinga(back)という 7つの木材の『積層』構造らしい。

 横方向に平たく積み重ねているラミネート構造で、ネックから繋がる縦方向にも深さは謎だが別の木材が一枚挟まっていて『ほぞ組み』みたいな構造だと思われる。ブリッジは各弦毎にそれぞれ別れていた。これもチョット変わってる。

 フィンガーボードは見るからに硬そうなバーズアイメイプル。

 ネックの裏側はこれもPanga Panga / Purpleheartの 2種類の木材を縦方向に交互に挟み込み 5層ラミネート状態になっている。軽さと強さの両立だな。ペグはGotoh製だった。

 ブビンガとかパンガパンガとか聞いた事ない木材だったので、これも凄く興味があったのは言うまでもない。持ってみると 5弦ベースとは思えない程軽いが、ストラップを装着して持ってみると、ヘッドが下がる事もなくとてもバランスが良いので、きっとネック自体も軽いのだと思う(トラスロッドも鉄ではなくチタンらしい。徹底してるわ)

 積層構造が謎だったので、色々あちこち細かく観察してみてると、アウトプットジャックの部分で構造が垣間見れた。やはり横方向に積み上げて接着したものをトップのメイプルだけ着色したのだと思われる。つまり、塗装時にマスキングをしてトップの一部分だけを『後から』塗装した…って事だな。ほんと一々手が込んでる。

 ゆえに、この言いようもない美しさを醸し出しているのだと思う。いやぁ…素敵っす!最高だw

 今日は丸一日、猿の様にコレを弾きまくったのは言うまでもない。

 肝心の音に関しては、一番最初の印象(全てセンターでアクティブON)は『スペクターっぽい』音だな…と思った。ちょっとドンシャリ気味。ただ、アクティブサーキットが非常に優秀で、幾らでも化粧できるので(3バンドEQ(MIDは周波数可変)がメッチャ効いて、音を幾らでも加工できてしまうので)本体のピックアップ+ボディの音というのはイマイチ影が薄い。

 アクティブSWを OFFにしてみたら、結構ハイが落ち着いて、寧ろコッチの音の方が好みかな。ただピックアップの特性なのか指弾きでも結構アタックが強く前に出る。ボディが鳴ってる感じ? ピックアップはハムバッキングなんだろうけど、弾いた感じは結構ハイまで出るのでちょっとシングルっぽい感じすらする。

 多分この『指弾きの時のアタック感』がこの積層ボディの特徴なんだろうな。これは今まで経験した事ないアタック感だ。でもスラップすると別に強調されずにアタックはフツー(うるさくない)なので、多分この各弦が独立したブリッジと相まって、ちゃんと弦を『横振動』させた時に出るアタックを、ボディがしっかり共鳴して拾ってるんだと思われる。いやぁ…中々奥深いじゃないか! こりゃ良いわ。コンプいらないw

 流石に夜中に指がボロボロになってしまったので、夜はこの子を遠目に眺めつつお酒を啜るシアワセなひととき。いやぁ…ホント嬉しい!

 今後とも長い付き合いをよろしく頼むよ!ベースくん。(名前つけなきゃな)
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