中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

七夕イヴ・モスケスペシャル

 日曜日。天気はまぁまぁ。気温はそれほど高くは無いが、湿度が高くて蒸し暑い日々が続いている。
 今日も今日トテ开心果で PAのお手伝いである。本日は『七夕イヴ・モスケスペシャル「星に祈りを〜赵磊ライブ」』と銘打ったライブが開催されるのだ。上海の某著名日系企業総経理さんだったモスケさんが広州に移動になってから早数ヶ月?久々に上海に遊びに来て下さったのだ。彼は、プロの二胡奏者である『赵磊』さんの後援会の会長さんでもあるので、こうやってわざわざ上海の(しかも开心果で!!)ライブの企画を立てて下さった訳だ。実に素晴らしいと思う。

 まずはモスケさんのご挨拶から。

 そして演奏開始。演奏は、相変わらずダイナミクスに富んだ素晴らしい演奏だった。やはりプロとアマチュアの最も違う部分はダイナミクスの使い方だと思う。CDの音圧競争が始まって以降、世の中の音楽に於けるダイナミクスの考え方が根本から変わってしまった様な気がして非常に悲しい今日この頃ではあるが、やはりライブは全然違う。唯一、心の底から『躍動感』を味わえるのは『ライブだからこそ』だと思うのだ。
 だから、PAをする側としてはフォルテシモに注意しなければならない。歪んでしまったらどんな演奏も台無しだからね。でもゲインを低く設定するとS/Nが悪くなるから難しい。コンプをかければ良いのだけど、それだと味気ないというか本末転倒である。シンプルな楽器ほどダイナミクスで表現は激変するからね。それを潰してしまっては意味が無い。実は二胡ダイナミクスは非常に広いのだ。時に繊細に、時に野蛮に変化する。
 今回、PA的にはシンプルな単音楽器とピアノだけである。つまり音源は2つだけなので簡単に思われるかもしれないが、PAとしては、こういうのが『ごまかし』が一切効かないから一番難しいのだ。

 【無音との戦い】ピアニッシモ〜音が消える瞬間が二胡の真骨頂。今回のお客様に対し、この部分だけは何とか上手く再現できたと思う。

 リハーサル時は音響も完璧では無く、多少ピリピリしていた雰囲気は否めなかったが、本番は打って変わり自由に伸び伸びと、それこそ天まで昇る様な素晴らしい演奏をしてくれた。客席を観ると涙を流しているお客様も居た。やはりプロは全然違う。本当に。。。その事を思い知らされる素晴らしい演奏だった。分母が違う分、振れ幅も非常に大きいが、中国って本当に凄い国だな…って思う。この国を離れられない理由の一つカモ。実に奥深い。

 彼は性格も非常に真面目で、MCも真摯に毅然とした姿で静かに凜と喋っていた。日本に居ると色んなネガティブなニュースばかりでステレオタイプになりがちだが、こういう中国人も居るのだ。

 縁あって何度かPAをやらせて頂いているが、真剣に応援したいアーティストの一人である。今日も実に良い演奏会だった。