中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

上海の日本国領事館にてイベント

 水曜日、上海は雨、気温は28度くらいで涼しい一日だった。
 本日もイベントPAである。場所は日本国領事館。今日は以前何度か行った事がある公邸では無く、兴义路の方にある領事館の 1Fのホールが会場である。
 領事館ゆえ搬入は超厳しくて、パスポートチェックは当然の事ながら機材車の荷物検査も結構大変。そして小雨の降るなか何とか搬入完了。会場は二つの部屋を繋いだらしく結構広い場所で、縦に長く 150席くらい座席が並んでいた。

 早速仕込み開始。本日も先週日曜日にワタクシがライブ PAを担当させて頂いた津軽三味線奏者の『只野徳子』さんのライブである。
 この部屋は天井はそこそこ高いのだが、結構壁が『響く』ので、この残響を生かさない手は無い。部屋の残響を味方につけるべく色々と考えた。しかしフツーにステージに立って手を叩くと、真正面の壁に反射した音が数十ミリsec.遅れてステージに直撃する。まさにショートディレイ。日光の『鳴き竜』の様だ。こりゃ厄介だなぁ。
 とにかく縦に結構長い(25mくらいある)ので後ろのお客様が音量的に物足りない恐れがあるため、元々この部屋にあった RAMSAの結構良さげな PAスピーカーを後方座席用のサブPAにする事にした。大ホールっぽい臨場感を演出するためココからはリバーブ成分を若干多めに出して、先ほどのシンプルで痛い天然ショートディレイ音を打ち消す様な『複雑な残響』を作る予定。
 方針が決まれば後はイツモ通りにサクサクと仕込む。いつもの『はやPセット』の完成(笑)


 しかし音を出し始めてトラブル発生。なんと会場の RAMSAのスピーカーの片方のツイーター(高音再生用のユニット)が既に最初から飛んでいたのだ。少し傾けると「ゴトッ」という音がするので、飛んでる訳じゃなくてツイータードライバーがホーンブロックから外れて中に落ちているだけかもしれない。…とは言え何れにせよ出音はモコモコでマトモに鳴らないのでこのままでは使用できない。うーむ…困った。
 実はタカさんから機材のリストを貰った際に、会場に設置されているスピーカーが結構良さげなモノだったのでコレを使用する前提で、今回は普段使っている JBLのスピーカーを持って来なかったのだ(ドライブするパワーアンプだけ持って来た訳だ) いやはや後悔先に立たずとはこの事。やはり機材は横着せずに自分らで全部持ってくるべきですな。。。特にスピーカー等の箱モノはデカくて重いからなるべく減らしたい…と考えるのが常だが、こういう事もあるので注意が必要、反省反省。
 さて、とは言え落ち込んでいても始まらない。リハ開始の時刻は刻々と迫っているので、色々と考えながらアチコチ歩き回っていたら部屋の一番奥(繋がってる隣の部屋)の後方上部の壁に埋め込んで有る四角いネットに目が付いた。昔の小学校の講堂に有る様な感じのモノで、コレ多分スピーカーだろう。ネットの大きさからして結構大きめのユニットと思われる。しかし埋め込み式なので配線がどこに繋がってるか分からないから、こちら側の部屋の卓(今回 2部屋を繋いでいるのでそれぞれの部屋にミキサーが有る)の裏に潜り込んで線を手繰ったら壁にパッチボードみたいなモノがあってそこに刺さっていた。そしてそれと思われるスピコンのコネクタを発見!お!コレでイケるかもしれない!!!
 スピーカー自体がネットで覆われているため、フルレンジなのか2wayなのかユニットの大きさすらサッパリ分からない。どんな音がするか分からないが、もうコレに賭けるしかないので、我々のメインの卓から30mのスピケを延長して40mくらいにしてようやく接続完了。音を出してみたら若干ハイ落ちしているモノのちゃんとツイーターも付いていて左右とも普通に鳴るじゃ無いか!出力的にも余裕ありそうだ(嬉)いやぁ…助かった!
 そしてザックリと後ろのスピーカーの音をEQで纏めた後は、怒濤のリハーサルに突入である。実際に楽器を鳴らして貰うと、三味線はアタックが強いので例の真正面の壁から帰ってくる「パチン」というショートディレイ的な部屋鳴りがとても気になる。コレを上手くボヤかしつつステージ上と会場同時に音を作り込む。
 とは言え演奏者が一番大事なので、上の音を演奏者のポジションでヒタスラ作る。その日のパフォーマンスの善し悪しを決めるのは演奏者のモニタ環境が全てと言っても過言では無い。とにかく演りやすい環境、コレが一番大事なのでココに時間をかける。iPadコントロールだからこそ出来るこの技。自分の耳で聴きながらその場で調整できるのはホント助かる。

 ようやく徳子さんソロ部分のリハーサル終了。後はアンサンブル部分なので共演者待ちである。ホッと一息。やっとトイレに行くことができた(苦笑)

 後ろの壁埋め込みスピーカーは結構クセが有ってコントロールしづらい(壁全体がバッフル板になって低域でヤタラと共振する周波数が有る)のだが、何だろう?コレ単体で聴くと悪くないのだ。クラシック向き?と言えば良いのかなぁ? 『木』の感じ?というかBGMをかけると真空管オーディオっぽい優しい音がするから、上手く使えば良い効果が得られる。今回はステージ前方から25mくらい後方にあるスピーカーでしかも逆向きなので、当初「位相を逆にしてタイミング調整のディレイを噛まさなきゃ無理かなぁ」と思っていたのだが、コレだけ距離が離れているから寧ろ位相云々よりも全体の『響き』のコントロールの方が大事に感じ、とにかく部屋鳴りのパチンという嫌なディレイを濁らす様にメインSPで使っているリバーブとは全くタイプの違うリバーブを重ねて音量を下げ目にして調整してみた。ただボヤっとしてしまうとマズいので、その辺は細かくEQで原音のシャキッとした感じも残る様に作り込んでみた。我ながら良い線行ってるんじゃないかな?なんて自画自賛(笑)
 雨で、共演のミュージシャンが遅れている…との事で、お客様参加型のワークショップコーナー用の三味線のセッティング&テストを行い、時間もあったのでタカさんと二人で少し弾かせて貰った。三味線って 5度チューニングなんだね。弦も結構柔らかいのにあんなデカい音が出るんだから不思議だ。面白い!

 そして共演のお二人が到着したのでセッティング〜リハーサル。
 カホンは原音の周波数だと重低音が足りないのでベースアンプをサブウーファー的にうっすらと鳴らして迫力を追加。サブ送りは 100Hz~200Hzの本来のピーク(モッサリ)部分をバッサリ切って64Hzとかを上げて薄化粧(キック感の演出のみ)をする。

 午後 7時本番スタート。かなり多くのお客様がいらっしゃった。今日はほぼ 100%中国人のお客様である。

 部屋の後ろの方まで行くとステージが結構遠い遠い(笑)でも後ろのスピーカーのお陰で良い感じに『大ホール感』が演出できていたので安心した。


 いやぁ…本当に素晴らしい演奏だった。魂が震える様な、心に『刺さる』演奏だった。只野徳子さん、本当に素晴らしいミュージシャンだと思う。これからも頑張って欲しい。影ながら応援させて頂きます!
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