中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

ちょうど丸2年

 月曜日、関東地方は曇りのち晴れ。気温は31度。朝は涼しくてバスや電車のエアコンが寒いくらいだったのだが、昼から少し暑くなった。(…とは言え上海に比べると快適そのものである)
 今日は朝7時前に家を出て、湘南新宿ラインで大崎でりんかい線に乗り換え国際展示場駅へ向かう。毎回思うのだが朝の大崎駅は駅からヒトが溢れそうだ。みんな無言でスタスタと早歩き。

 今更気付いたけど、サラリーマンの皆様はスーツなのにノータイなんだね。ワタクシ昭和な人間なのでサラリーマンの時代は夏でもネクタイしていたよ。良い時代になったものだ。
 そして朝8時、りんかい線国際展示場駅に複雑な気持ちで降り立つ。そして向かうは『がん研有明病院』である。そう、本日は年に3度のルシアンルーレット(定期精密検査)の日なのだ。ワタクシの命の恩院は後光が差していた。

 入り口で足を止め、大きく深呼吸をして門を潜る。そしてイツモの様に自動受付機にカードを入れてスケジュール表とPHSを受け取り、まずは採血へ。採血エリアは 8:15AM開始なので少し並ぶ。
 そして、やたら親切な看護師さんにタラフク血を抜かれた後は、巨大なドーナツに入る。


 造影剤が身体に入ってくる生暖かい感覚を感じながら目をつむって息を止める。巨大なモーターが身体の周りを回転する音を聞くといつも映画 AKIRAを思い出す。実際にCTを撮ってるのは 20秒くらいなのだが、不思議なもので色々な景色が頭に浮かぶ。
 諸々全ての検査が終了した後、やっと朝飯が食えるのでサンドウィッチとコーヒーで一休み。ドトールのこのコーヒー何気に結構美味しくてびっくり。上海にもこういうの出してくれないかなぁ。

 その後、長い長い待ち時間の後、呼び出しPHS端末が鳴ったので主治医のドアをノックする。。。


 2年前の今日 8/28、ワタクシは深い麻酔の中に居た。腹腔鏡による胃の GIST摘出手術は成功し、ワタクシの胃の外壁から 4cm x 5.5cm程の非常に大きな卵形の腫瘍が摘出された。しかも、イワユル昔ながらの『開腹手術』では無く、身体の腹部 4カ所に 1cmくらいの小さな穴を開け、そこからマジックハンドとカメラを突っ込んで、ディスプレイに表示される小型カメラの映像のみを手がかりに腫瘍を切除し、それを他の臓器に触れない様に『ヘソ』から取り出す…という、いわばリモコン!?手術である。今考えてもこんなアクロバットな事が成功したなんて信じられないが、お陰様で今こうしてワタクシは元気に生きている訳だ。
 正直この手術の説明を受けた際、ワタクシは一抹の不安を隠せなかった。当時どこかの大学病院で腹腔鏡を使った手術で悉く失敗していた死亡事例があったから「そんなヤヤコシイ事しないで、いっそのことドバーっと30cmくらい切っちゃって下さい」と先生に話したのだが、「そういった大きな開腹手術をした場合、後々の身体の負担が非常に大きいし、半年くらいマトモな生活が出来なくなる。腹腔鏡は安全だし、こと胃に関しては失敗事例は殆ど無い。先般某大学病院で失敗が報じられたのは肝臓で、肝臓は非常に難しいのでココでは絶対やらないです。貴方のは胃です。これから先の退院後の生活を考えても腹腔鏡の方が絶対良いです」と、主治医の熱のこもった真っ直ぐな瞳を見て決断したわけだ。
 そんな訳で、個人的には色々と覚悟を決めて挑んだ手術だったが、手術は無事成功し、その後も驚くべき速度で回復して、手術から 1週間経たないウチに退院する事ができた。退院後の経過も順調で1ヶ月後には仕事に復帰できていたのだから腹腔鏡ってホント凄い。主治医には感謝しかない。今、フツーにプールで裸になって泳げるのも腹腔鏡だったからこそである。誰もワタクシがそんな大きな手術したなんて気付かない程、傷が小さいのだ(今や殆ど消えちゃって見えないくらいだ)
 あれからちょうど『丸2年』である。実に感慨深い。残念ながら取り出した腫瘍は悪性だった為、抗がん剤の治療を勧められたのだが、諸々の理由でワタクシはそれを断り、その代わり定期的に検査を行う事にした訳だ。故に年に数回一時帰国を余儀なくされているのだが、全く後悔はしていない。


 主治医の診察室のドアを開けると、懐かしいクールなポーカーフェイスが私に向かって微笑んでいた。この先生はヒトを落ち着かせる才能がある。そして椅子に座って本日の検査結果を聞く。。。。。結果は。。。。
「転移の兆候なし!血も見事に綺麗です!」だそうな。
 いやぁ…良かった。毎回嬉しいが、今日は2周年なので特に嬉しかった(本当に涙が出そうになった) がんという病気は『5年生存率』で語られる事が多いため毎回ヒヤヒヤである。ワタクシの場合は抗がん剤を拒否しているから確率論で言ったら再発の確率が非常に高いので、いつ爆発してもおかしくない爆弾を抱えて生きている様なものだからね。
 そんな訳で帰宅後は一人打ち上げナウ!である(笑)

 多くのヒトに救って頂いた命だ。これからも大切に『太く』生きますよ! 貧乏でも元気に楽しく行くぜ! 自分が少しでも『輝く』事、それがワタクシなりの『感謝』のつもりだ。
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