中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

仕込み日(三日目)

 木曜日、上海は快晴、気温は 23度。非常に清々しい良い天気。
 朝 6時に起きて 7時前には家を出てベンツアリーナに向かう。昨夜遅かったので朝起きるのがツラかった〜。でも老体に鞭打ってオシゴトである!

 現場に到着したら既にステージが完成していてアリーナに椅子が並んでいた(まだ板面むき出しでリノは貼ってないが一晩でココまで進んだのは素晴らしい)
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 ワタクシは例によって技術通訳のグループなのだが、今回はイツモの様に PAさん担当では無く、珍しく『電飾さん』の担当なのだ。…とは言え、ワタクシは根が音響屋なので(PA関連が気になるので!?)朝の暇な時間に色々偵察に行ってみた。PAさんのメインコンソールも、昨日壊れたモニ卓と同様 DiGiCo SD-7らしい。どうやら MADI接続で FOHからモニ卓まで送っている様だ。
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 そして日本クルーの到着を待って早速仕込み開始である。

 中国ではステージ電飾はあまりポピュラーじゃないため(中国人は派手なLEDスクリーンが大好きで、基本的に直ぐに大型スクリーンにしてしまう)いわゆる『電飾』は経験値が低い。ゆえに専門のエンジニアが少ないから大体毎回トラブるのだ。
 そんなワケで多少は覚悟していたのだが、今回のは非常に複雑で回線も多いので、そりゃもう『トラブる…』なんてモンじゃない。何というか 2歩進んで 3歩下がる!? 的な進捗状況。まずマトモに点かない、色が変、というのはまだ可愛いモンで「え?照明トラスのタッパ決める前に電飾のケーブルがトラス跨いじゃってて、しかも既に飛んでるトラス上にバミってるの? これじゃ照明トラス動かせないじゃん? しかもコレ跨いでたら、照明を上下したら長さ足りなくなるじゃん? え〜またトラス下ろすの?」…的な(苦笑) あと最も困るのは、中国側スタッフが『多分こうやって使うんだろう』って勝手に想像して、故意に分けてある回線をくっつけたりして勝手に効率化するから、後から修正が多い多い。継ぎ接ぎで増やしていくから、DMXアドレスもぐちゃぐちゃ。ちゃんと図面通り作ってほしいわホント。

 こんな状態でも、通訳であるワタクシは中国サイドの言い分と日本サイドの要求とをシッカリ理解した上で、両方になるべく角が立たない様に説明しなきゃならないからタイヘンなのだ。久々に胃が痛い現場だ。

 暫し修正に次ぐ修正を繰り返し、何とかマトモに出る様になったと思ったら、直ぐにアーティストリハーサルへ突入である。いやぁ…マジで全然時間が足りない。

 そりゃそうと関係ないが、リハに入ってから気づいたのだが、今回の何が一番凄いか?ってフォロースポットの数である。女子校の 1クラス分くらいの歌手が一気に同時に舞台に上がって歌うので、ピンの数が尋常では無いのだ。

 まずメインが 6本。
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 そして下手サイドに 3本ずつ 1ペアで、角度を変えて 2カ所から 6本。
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 加え上手サイドも 3本ずつ 1ペアで、角度を変えて 2カ所なのでココも 6本。
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 そんなこんなで全部で 18本もある(驚)ワタクシ、結構長いこと色々な現場を見てきたが、1つのステージに当てる数としては最高本数である。
 ピンって数が増えると何がタイヘンか…っていうと『インカムでの指示』なんだよね。。。昔ピンの通訳もやった事が有るのだが、アレは超絶タイヘンだった。いわば指揮者みたいなヒトが居て、全員に同時に指示して「せーの」で歌詞のブロック毎に(Aメロ,Bメロ,サビという感じで)決まった色を決まった場所に決まった大きさで当てなきゃいけないし、タイミング良く開閉した後もそれぞれの担当歌手を追いかけなきゃイケナイので、インカムでの指示は火事場の騒ぎになる。通常は 3〜 4本でも結構うるさいので、今回の 18本は想像しただけで卒倒するわ(苦笑)しかも日本的な『わびさび』やタイム感が分からない中国のピンスタッフに同時通訳するのは壮絶だろう。あの距離からだと顔なんて見えないだろうから、同じ衣装を着た数十人の中からソロを抜くのは至難の業だもんね。今回ピンの通訳じゃなくてホント良かった。

 …とかなんとか!? 考えてる間も、リハーサルは恙なく進んで行くのだが、何せ人数が多いから決め事も多いワケで、全部で 3時間以上休みなしでやっていた。みんなよくトイレ我慢できるなぁ…なんて下らない事に感心したりして。

 リハ終了後は『直し』である。ワタクシは今回は『電飾』さんの担当通訳なので、案の定!? 深夜まで。
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 こういう現場って作業時間的に言うと、照明さんが一番遅くまで作業していて、次に電飾さんなんだよね。。。照明と電飾は現場にモノが正しく吊れて、初めてテストができるし、現場の高所に吊ってある物体をリアルに物理的に修正しながら作業しなきゃイケナイわけさ。しかも会場を暗くしなければ色味とか分からないから、ほかのスタッフが作業している時間帯は殆ど仮打ちみたいな事しかできないのだ。故にほぼ必ず深夜になるワケ。

 『日本人はホント真面目だなぁ…』なんて『素』でリアルに感じてしまったが、自分も日本人だった事を思い出して一人で失笑。

 深夜 1時過ぎ「こりゃ徹夜かな…」と覚悟したときに、我々スタッフの気持ちを察してか!? 「あとは明日にします!」って感じで突然終了。何コレ『働き方改革』???…というのは冗談で、実は DMXアドレスがあまりにバラバラなので埒があかないから、朝までに現地業者に一旦全部再確認して整理してもらう事になったダケなんだけどね。
 いやぁ…でも助かった。50過ぎると貫徹はキツいのだよ、やっぱ…。 現地業者は徹夜決定なので心が痛いが、まぁ約束した内容ができていないのだから仕方ない。business is business.

 さて!明日は Day1の本番日! どうか事故無く無事に終了します様に!
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