中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

『Ivory』と『Decapitator』と外部ワードクロックの美しい関係

 木曜日である。曇り時々小雨。何だか肌寒い今日この頃。
 仕事は何だかイベント関連の準備で忙しい。加えテーマ曲を作ったり、歌の差し替えがあったりして、あっという間に夜 10時過ぎ。あ〜腹減った。夕食抜きでこの時間まで耐えたので、このまま喰わずに寝ようと思ったのだが、帰宅したら美味しそうなオカズがテーブルに並んでいたので結局喰ってしまった。あ〜あ、デブまっしぐら。

 さて、写真は今、職場用として使ってる Digi003-Rackの SYNCランプ。

 今までココ(職場)では demo作りや低ビットレートのゲーム用の BGM、あるいは効果音くらいしか作らなかったし、マトモな音源を纏めてもせいぜいプリプロ程度で CDやホールで流す様なちゃんとした音源を作る業務が少ない為、普段自宅では全然使わなくなった 003を持って来て、それを内部クロックで動かしていたのだが、今回久々にちょっと CDになる案件が来たので、外部のクロックジェネレータを持って来て繋いでみた訳だ。(一応003にも外部クロックを受けられるBNCプラグが付いていたので)

 最初はあくまで『保険』的に使うつもりだったのだが、やっぱり音が変わるから面白い。CPU-Native環境で多くのトラックにプラグインが刺さっている高負荷状態のセッション上での、倍音が比較的多い楽器の『音の出方(っつーか混ざり具合)』が特に変わりやすい気がする。

 今回、特に感じたのは Synthogy社の『Ivory 2.1.1b (AAX)』のベーゼンのピアノで、ダンパーを踏んだ状態で長いノートを再生中の混ざり具合に違いを感じた。
 Ivory2には『Key Noise』というパラメータがあり、これは鍵盤を叩く際やダンパーペダルを踏む際に発生するノイズをエミュレートしてくれるので、個人的にこの機能が大好きで毎回使いまくってるのだが、コレを上げるとややクセの強い音になってしまう為、コレの後に SoundToys社の『Decapitator』を薄〜く噛まして、ヘッドアンプ的なサチュレーションを加えた後に 最後に Sonnox EQをかけて使うのがワタクシ的なピアノトラックのデフォルトとなっている。

 Ivoryはサンプリングピアノのクセに元音源にループポイントが無く、1音1音、鍵盤を叩いてから完全に音が消えるまでを1つの鍵盤につき1つの音源ファイルに収録してある贅沢な作りをしている(鍵盤が88鍵有れば、30秒〜1分くらいのwaveファイルが 88ファイル入っている/厳密には叩く強さ(ベロシティ)によっても違うファイルが選ばれるので無限に近いファイル数)ので、それゆえダンパーペダル(サスティンペダル)を踏んだ状態で和音を弾くと、音が完全に減衰し切るまで、それぞれの倍音が複雑に絡み合いつつ消えて行くのが楽しめる。
 面白いのは、ワタクシは音の『途中〜消えかかり』の方が『出始め』に比べて倍音成分を多く感じる…という点で、それ故ココで Decapitatorをコンプ代わりに使うと良い感じにナチュラルにリアルな倍音が出て来るので毎回こういうセッティングにしている訳なのが、デカピ自体もかなり CPUを喰うプラグインの一つである。その割に個人的にカナリ好きなプラグインなので常時結構多めのトラックに刺さってる事もあり、どうしてもワタクシの作るセッションは、プラグイン数の割に CPUは常時カナリ振ってる状態になりがちになってしまう。

 そんな訳で、CPUが高負荷になった状態で、オーディオ I/O動作を『内部クロック』設定にすると(つまりCPU側でクロック生成する)とワードクロックの生成に必要な十分な安定したクロックが生成できなくなるのだろう。上手く言えないが『モヤッ』と『美しい』感じ?の音に感じる。これはこれで決して悪く無いのだが、外部クロックジェネレータを通して音を聞くと、コレが『ビシッ』と締まる硬質な感じになる訳だ。(二つを交互に、息を止めて真剣に聴き比べないと分らないレベルだけどね)

 でも、じゃぁコッチの方が音が良いか? と言われると即答しかねる訳だから音楽は難しい(笑)

 要するに、最近の地上デジタル放送で毛穴まで見えるクッキリ映像を見るのと、一昔前のブラウン管の大画面TVで見るのとどちらが『好き』か? という好みの問題になる。寧ろ毛穴なんか見えなくて良いから、ハレーションを起こしているくらいデフォルメされている方が、作品そのものの『熱さ』が伝わるし、想像や妄想の隙間も生まれるから、そこから『サブカル』に発展しやすいんじゃないの?…とも言えるカモしれない。

 ただ一つ言えるのは、どちらも、そればっかり見てると『慣れちゃう』って事だな(笑)

 とは言え、録音機器というものは、途中で変化しない方が望ましい。それゆえ『故意に』音の変化を利用する(楽しむ)目的以外では、クロックジェネレータを使った方が良いだろう…という結論でした。

 下の写真は夜11時前にバスを降りて誰も居ない通りを歩いて帰る図。寒い寒い。