中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

仕込みの1日

 火曜日、上海は曇り時々雨。気温は高くないが何となく蒸す一日だった。
 今日は外滩のリビエラさんにて PA業務の仕込み日である。明日が本番なのだが、日本のかなり著名なピアニストさんがいらっしゃる…との事で、入念にセッティングを施す。
 会場はウォーターフロントの素晴らしいロケーション。しかし4面がガラスに覆われていて、天井はビニールクロスの下に布という音響的には実に難しい現場である。しかも横長の現場なので、外をメインにして中抜け対策を入れるか、内側をメインに外にエンバイロメントを入れるか非常に悩ましい。
 朝9時半に現場入り。そしてヒタスラセッティングである。経験上、メインはアリーナなので、やはり中抜けで誤魔化すよりはメインを内側に持ってきて外をエンバイロメントとして補強する方法にした。


 マイクは X-Yのワンポイントステレオのコンデンサーをメインに、ハイエンドとローエンドの空気感を SM57で挟み込む作戦である。

 アンプは开心果の YAMAHAとワタクシの CROWNの 3台で 6chと万全の体制。8Ω換算で 600W x 3 = 1800W!余裕余裕(笑)アナログアンプはクソ重たいケド、巨大トランスは安心感が全然違う。

 午前中で何とかある程度音が作れたので、調律師さん待ちの間にタカさんと二人で昼食。ウォーターフロントのオープンデッキでとんかつ!

 …のつもりが、小雨が降り出したので屋根のある部分に移動。


 お昼の外滩も中々イカす。


 そして午後一から調律師さんがやってきて調律開始。その間にワタクシは微調整に入る。
 そりゃそうと、グランドピアノってこんな風にハンマー部分をユニットで外す事が出来るんだね。全然知らなかった。


 今回の調律師さんは今般のツアーの為にわざわざ日本からやってきた YAMAHAの日本人エンジニアさんだった。驚いたのは、音の調律の前に、タッチの調整を始めた事である。彼曰く「音程の調律は比較的簡単なのですが、タッチと響きを調整するのが実は一番難しいんです」との事。いやぁ…勉強になる!
 非常に複雑なテコの仕組み?を教えて貰いつつ、『当たり』部分の粒を揃えるため紙やすりみたいな工具でハンマーの部品の一部を削り出すではないか!凄い!こんな現場中々見られないので何だかとっても得した気分(笑)こういう職人気質なエンジニアさん大好きだ。

 今回も卓はワタクシ的秘密兵器を導入。大分使い方やクセにも慣れてきたし、やはり音が良いのでコレを使う機会が増えてきた。
 でもフィジカルフェーダーが無い現場は実に妙な感じ?で中々慣れない。しかもお昼は自然光が強すぎるとディスプレイが見えない!という欠点もあるわな。

 そして調律が始まってから約 3時間後にご本人がいらっしゃってリハーサル開始。ワタクシが今回担当させて頂くピアニストは、日本でもかなり著名な『仲道郁代さん』という方ゆえ前評判があまりに強かったため、異常に緊張してしまい無駄な冷や汗をかきまくっていたのだが、実際にお会いしてみると非常に優しくて心の広い方で、音響も褒めて下さったので一安心。いやぁ海外公演のストレスって並大抵のものでは無いので、そんな中で少しでも自分の技術が役に立つのは嬉しい。
 明日の本番、頑張ろう!
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