中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

Avalancheリハーサル

 水曜日、上海は晴れ、気温は19度で少し暖かい。
 朝、差し替え用の22インチのチャイナシンバルを持って出社。ソフトケース2つ持っていて良かった。改札のX線検査で「これは何だ?」と訊かれたので『镲片』と答えたら、ものすごく不思議そうな顔して、それ以上訊いてこなかった。まぁバンド業界ではシンバルの事を镲片って呼ぶけど、どうも一般的な単語じゃないらしい。
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 本日は12月16日のイベントに出演する Newバンドのリハーサルが有るため早めに仕事を終えて、イツモお世話になってるLLバーに向かった。到着後は怒濤のセッティング。写真じゃ判りにくいが 22インチのチャイナはデカくて存在感がスゴい(笑)
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 ZildjianのQuickBeat HHはボトムが分厚くて重いのでピッチが高くて非常に明るく音抜けが良いから好き。
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 リハーサルは順調。機材類も落ち着いてきて、前回のリハの内容をメモリーリコール出来るのでセッティングの時間(というよりサウンドチェックの時間)がカナリ短縮出来てきた。良い感じだ。
 演奏自体も色々と懸念点はあるモノの、ようやく演奏に余裕ができてきて周りの音が見えて来るので、それぞれのノリを探りながら叩くのが楽しい。
 そもそもワタクシのバンド『Avalanche』は、コンピューターのシーケンスとガッツリ組んで表現する事で初めて為し得る 80年代的に言うとニューウェーブっぽいバンドなのだが、最近、別の現場 (12/1に某所で出演予定の別のバンド) でもシーケンスを作って入れる事になってしまったため、ここへ来てクリックを聴きながらドラムを叩く機会が増えている。そんなワケで叩きながら色々な事を考える事が多い。

 20世紀からコンピューターと人間の同期共演は存在していたが、21世紀に入ってHDDレコーディングがよりお手軽になり、プロの現場ではLiveでも『クリック聴きながらオケと一緒に演奏するのが当たり前』になってしまったのだが、ここ10年くらいはライブでの機械の割合が増えすぎていて全然面白くない。機械がメインで人間が『上物』では本末転倒だと思うのだ。お客様は CD的な音楽を聞きに来ているワケじゃないからね。コンピューターと合わせつつも、その中で『如何に人間臭さ』を出すかが重要だと思うんだな個人的には…。

 昔はシーケンサーって、ちゃんと「コンピューターさん」という『楽器』があって、そのコンピューターさんにも『(正確無比という名の)独特なグルーヴ』がちゃんとあったのだ。ところが、昨今は人間が実際に演奏して録音したテイクを、ライブ演奏中に同時に流したりするからワケが判らなくなってきた。ライブ演奏中の人間の脳からしか出てこないグルーヴと、時間軸がズレた現実世界で別の人がクールに弾いた音源のグルーヴ…というのは、明らかに温度が違うので、オケで流してそれに合わせて演奏しても「全然馴染まないなぁ…」と感じる事が多い。特にマルチトラックで複数のトラックを流しているとそれが顕著で、要するにドラマーは『誰の』『どの』グルーヴに合わせて良いか判らなくなるため、無意識に『クリック』という実に非音楽的なメトロノームに合わせる事に必死になるワケだ。これはグルーヴの最小公倍数を見つける様な作業である。そもそも同一シーケンス内に複数のグルーヴが存在する音源に対して『後から』ドラムを入れる…なんて無理が有る。自分のリズムをそのどこかの間に『置かなきゃ』イケナイ…という恐ろしさ。故にクリックが命綱となり、どうしても頼らざるを得ないのだが、残念ながらクリックを聞き始めると周りの音が聞こえなくなる傾向があるから困りもの(だって周りの音を聴いていると他のグルーヴが気になって気が散って散漫になるからね) そんなワケで『クリックとオトモダチ』状態になってしまうとライブ中にとっても孤独を感じるんだなぁ…「ぽつーん」ってひとりぼっちで演奏してる感じ? この矛盾(音数は増えてるのに、より孤独になるという…)に苛まれるワケ(笑)人生って難しい。

 そこでワタクシが現在自分が取り組んでるバンド『Avalanche』では実験を兼ねて色々と冒険をしている。ウチは結構な割合(っつーか100%だな)でシーケンスを入れているが、実は敢えて全てのトラックのほぼ全てのフレーズに確実にガッチリとクォンタイズをかけている。つまりマシンの中でのグルーヴは『一つ』しか無いのだ。いわゆる 4人目のメンバーとして『コンピューターさん』が存在するワケ。「えーそうしたらツマンナイ演奏にならない?」と心配される諸兄もいらしゃるだろう。バンド経験が長い方ほどそう思うと思う。かくいうワタクシもそう思っていた。
 し・か・し、この『クォンタイズの不自然さ』って生楽器をシミュレーションしようとするから発生する…という事に気付いたのだ。シーケンスに生楽器風な音源をなるべく使わない様にすると、コレが面白いモノで全く別の世界が見えてくる。PC内部のグルーヴが一つに纏まった途端、今まで見えなかったモノがグルーヴとして沢山見えてくるのだ。
 しかもウチのバンドはイヤモニ必須で、イヤモニシステムも含めて楽器の一部として設計しているので、リハも本番もメンバー全員が『全員の出す音+コンピューターさんの音+クリック』を漏らさずシッカリと確実に聞き取る事ができるため、それぞれ恐ろしい程クリアに歌やギターが聞こえるワケ。つまりメンバーそれぞれの独特なグルーヴに対して『何処に』持って行こうか?という事を全員が意識しながら演奏できる仕組みなわけだ。(まぁそれ故セッティングは大変なんだけどね)

 今までこのシステムでリハを数回やっているが、お陰様で、面白い事にコンピューターさんにも『独特なグルーヴ』が存在する事を最近ハッキリと意識する事が出来る様になってきた。クリックを聴いてても全然孤独を感じない(嬉)
 プラスティックでクールなシーケンスに生ドラムのリズムと生楽器をホットに絡めうねらせ、そこに艶っぽい歌を纏わり付ける。ちょっと危険な歌詞も相まって蠱惑的な世界を演出する事を目指してます。80年代インディーズみたいだけど。実に楽しい今日この頃。
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 我々のデビューライブは 12/16 21:00〜。YESTERDAY PUBでお会いしましょう。乞うご期待。

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