中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

簡体字と繁体字

 ちょっと訳あって、ココ数日『繁体字』について詳しく調べているのだが、大陸側での認識と、台湾&香港側の認識があまりにもかけ離れている事を知って今更ながら驚いている。

 大陸側の人(簡体字圏の人)は、台湾や香港の映画や音楽やドラマもフツーに入って来て放映されているので、繁体字にも比較的慣れており、別にさほど違和感を感じずに字幕を読む事もできれば解釈する事もできる。
 つまり自分たちが使っている簡体字との差異をどちらかというと冷静に観察していて、それらとの違いは大した事は無く、殆どが漢字の置き換えだけで済むし、違うとしても語尾の文法や一部分の表現方法だけ…という認識である。

 モチロン、私も結構長い事『大陸』側に住んでいる為「繁体字とはそういう物だ」としか認識していなかったのだが、今回色々と調べてみて、実は台湾や香港(特に台湾)側の人は、全くそう思っていない事が分かったのだ。

 彼らは『自分たちは大陸の人間とは違って優れた民族なので、一緒にしないで欲しい!』という気持ちがあるのか、簡体字の文法で繁体字を書かれるとカナリ嫌悪感を感じるらしい。例え実際の差異がそれ程大きなもので無く、殆どが理解できるとしても、多くの人が「全然違う!」と言い張るとの事。
 日本語にも『読み言葉』と『書き言葉』があるが、例えば香港は喋るのは広東語なので文法的には簡体字と殆ど同じであるにも関わらず、表記する場合は、敢えて簡体字とは違う言い回しを書く事を好むらしい。

 いやぁ…根深い。そんな事は全く知らなかった。

 昨日、以前翻訳会社に勤務していた日本人に色々と話を訊いてみたのだが、彼が昔所属していた翻訳会社では『繁体字の翻訳は絶対に大陸の人に担当させてはイケナイ!』という社内規定があるらしいのだ。繁体字の翻訳がある場合、どんなに割高でも必ず台湾の会社に出す決まりになっているそうな。『繁体字は全く別言語』と捉え、別料金で対応しているとの事。どんなにしっかり勉強をした人でも大陸側の中国人には絶対に訳せないからだそうな。そこまでプライドが高い言語の様だ。

 因みに、中国語版のMS-Wordには、簡体字←→繁体字の一発変換の機能がある。OSを作っているメーカーのワードプロセッサソフトが『機能』として搭載している…という事は、やはり使用する人を少なからず想定してるわけで、…という事は実際の差異はそれほど大きく無いと思わざるを得ない。

 しかも、コレで単純変換しても確かに「全く意味が通じない」という訳では無いらしい(勿論誤字があったらマズいが…)。こういう状況にも関わらず「全然違う」と仰る繁体字圏の方が多いという事は、やはり文化的背景に基づいているのではなかろうか?…と想像してしまうのである。

 この問題、想像以上に深いカモ。
 繁体字の翻訳は実際の精度以上に注意(文化的配慮)が必要だ。以後気をつけよう。