中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

麻辣とドラムのハナシ

 木曜日、上海は晴れ。気温は 4度。お日様がある分多少は寒さは和らいで感じるが矢張り寒い。
 お昼に「そういえば最近『麻』な物を食べていないなぁ…」と無性に麻辣なものが食べたくなったので、今日は成都料理店に行ってきた。
 ココは曹杨路x白玉路にある『蜀巷』というローカルのお店。麻が好きなヒトには超オススメである。リーズナブルなのにとてもパンチのある麻が効いた料理を食べさせてくれる。

 今日頼んだのは担担面という拌面 18元(約350円くらい) 中国では麺類は大きく分けて汤面と拌面があり、スープが入ってるのが汤面で、焼きそばっぽくドロっとしたタレをかき混ぜて食べるタイプを拌面という。
 出てくる時はこんな感じで、

 混ぜるとこんな風になる。

 ワタクシはいつも微辣,少麻(辛さ控えめ & 痺れ控えめ)で頼むだが、コレでも滅茶苦茶辛い!!!…とは言え赤唐辛子と花椒(山椒)の辛さにピーナッツが良い具合に絡み合って、ピーナッツの歯触りとほんのりとした甘みと麻の痺れとがクセになる。半分食べた頃にはパンチのある花椒が効いてきて口が痺れまくって凄い事になるし、体中の穴という穴から汗?というか悪い液体!?が出てくる様なデトックス感が有りコレがまた快感なのだ。
 いやぁ…美味い! コレがあるから中国は止められない。(毎日喰ったらきっと死ぬだろうけど)

 会社に戻ってみたら、ウチの社猫が二人で同じ格好をしていた。ついこの間まで顔を合わせるだけで「シャー!」っと牽制し合ってたのに、もうこんなに仲良しだ。へんなの。

 仕事を終えてからは定西路x安顺路にあるファンファーレさんのリハーサルスタジオに行って、2時間ほどドラムの個人練習を行ってきた。実はちょっとワケあって久々に激しく難しい楽曲を譜面通りに完コピしなければならなくなり、サスガにイメージトレーニングだけじゃ埒があかなくなったのでスタジオに入る事にしたのだ。こういう風に自分でお金を払って個人練習に入るのは、ひょっとして学生の時以来!? 久々なのでナニゲに楽しい。

 ワタクシは個人的にドラムという楽器は最も簡単で実は最も難しい楽器だと思っている。
 学生の頃は、朝から晩までドラムの演奏方法の事しか考えてなかったし、暇さえあれば膝を叩いてイメトレし、必死に一流プレイヤーの楽曲を聴きまくって耳コピし(当時は譜面なんて無かったからカセットテープが伸びるまで何度も巻き戻して聴いていた)とにかく難しい曲のコピーをしたり、難しいオカズを習得しようとヒタスラがむしゃらに練習していた。
 しかしトシを重ねて作曲関連の仕事を始め、プレイヤーとして仕事でヒトのバックバンドとして演奏をする様になってからは、考え方が完全に 180度変わってしまったのだ。
 ご周知の通り、ドラムというのはソロ楽器では無い。
 ヒトが出来ない様な難しい事を演る=ヒトに「凄いね」と褒めて貰いたい…というヨコシマな欲望は誰しも有ると思うのだが、Jazzや Fusionを演るならまだしも、ポピュラー楽曲を演る場合、ドラムはあくまでバックバンド、つまり『裏方』なので、とにかく『出しゃばってはイケナイ』楽器なのだ。必要なのはリズムキープとグルーヴと楽曲に合わせた抑揚とメインのヴォーカルやソロ楽器を引き立てる様なフィルや叩き方。これらがずっとずっと重要となるワケだ。つまり無理して難しいフィルをこれ見よがしに演るよりは、楽曲の神髄(タマシイ)というか『最も伝えたい部分』を、聴いてくれるヒトに対して最も「スッ」と受け入れてくれる様にバンド全員で協力して楽曲を『1つの作品として表現する』事の方がずっと大事だったりする。
 しかもドラムはただでさえ音が大きい。ひょっとすると生楽器としては最も音が大きい楽器かもしれない。故に叩いているだけでドラマーは無意識に楽しくなってしまうので、ココはぐっと我慢して『自分達はお客さんに何を伝えたいのかな?』という事をじっくりと考えて叩く事。これがポピュラードラムで最も重要な事だとワタクシは信じて止まない。
 しかし、同時にこれは若い子やドラムを始めたばかりのヒトには凄いストレスになるのも自明だ。『自分らが楽しみたい』いや『自分が楽しみたい』という気持ちでバンドを演ってるワケだからね。それは決して悪い事では無いのだが、往々にして聴いている方は疲れてしまうのだ。大学の学祭とかはすぐお腹いっぱいになってしまう所以である。『楽しそうだね』という微笑ましさ以外、何も感想が残らない。それはそれで残念だと思うんだな。


 さて、何だか脱線してしまったが、そんなワケで、ココ20年くらい!? ワタクシは、敢えて難しい事を殆ど一切演らずに、自分の持てる最低限のテクニックだけで、歌を壊さない事に全神経を集中して『そつなく』叩いてきたのだが、逆に言うと、それを言い訳して殆どマトモに練習らしい練習をして来なかったとも言える。
 実はココに来て、とあるオーディションを受ける事になり、それは条件として『譜面通り』に叩かなければならないのだが、その譜面が驚くほど難しかったのだ。
 癖というのは恐ろしいもので、ワタクシはアレンジャー的な視点から『曲を生かす』事を念頭に考えてしまうため、譜面を貰っても「この曲の感じでこのリズムならば、逆にこうした方がもっと手数を少なくグルーヴさせる事ができるし、無理にパラディドルにしなくてもゴーストを逆にするだけで、ずっと安定する」…等々、経験から学んだ事で勝手に叩き方を変えてしまうクセがついている。つまり、自分の技量内で、その楽曲を最も生かせるアプローチを無意識に選んでしまうのだ。それはトドのつまり、譜面通りには叩けなくなっている!?自分がいて愕然としたワケだ。
 まぁ普通はココまで全てのフィルに関して譜面に起こされている楽譜も珍しいのだが、とは言え『譜面通り』が条件である。久々に、自分が普段やる身体の動きに逆らった動きを無理矢理身体に叩き込む…という行為が必要とされ、中々苦笑いしながらウンウン唸っているワケだな。ま、これもきっと運命?じゃないけどそういう時期なのかもしれない。頑張ろうっと。

 午後10時にスタジオを出てから、イツモの店で一杯だけ。M下さんとマラソンのハナシで盛り上がった。何だか最近色々と充実している。
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