中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

上海高島屋クリスマスイベント2日目

 日曜日、上海は晴れ。気温は15度くらい?かな。結構暖かい一日だった。
 本日も昨日に引き続き古北の红宝石路x伊犁路にある高島屋さんでのクリスマスイベントのPA業務である。本日はまず 5Fの現場からスタート。まずはフラメンコ。フラメンコは靴音が非常に重要なので、タカさんがわざわざ店から厚めの板を持ってきた。なのでワタクシも靴音用に律儀コンデンサーマイクを2本もステレオで立ててみた。板が結構『鳴る』ので、あくまで補助的に使うつもりだったが、やはり有るのと無いのじゃ全然違った。コレがあると迫力が全然違う。やはりマイク立てて良かった。

 そしてお次は YAMAHAのゴスペルクラスの生徒さん達のパフォーマンス。

 終了後は慌てて 1Fのステージに移動して次のステージの仕込み。

 1Fではコーラスグループが2組。1組目はボイスパーカッション等も入る日本人女性5人組+お子様がゲストで1名。故に1人マイク1本なので比較的やりやすかったのだが、曲毎にメインボーカルパートとベースパートが入れ替わるので結構大変だった。流石に覚えられ無かったので、本番前に紙に書いてもらって何とか切り抜けた(苦笑)でも我ながら結構いい感じに纏まったんじゃないかな?なんて思う。しかし作業的に全然余裕がなくて写真は一枚も撮れなかったのが残念。
 そして本日のワタクシ的ラストは、なんと総勢 18名のコーラスグループである。非常に大勢のコーラスグループで且つ『オケ有り』といった構成は、実は PA的には非常に音作りが難しいので『PA泣かせなジャンル』と言っても過言では無い。
 簡単に説明すると、TV局みたいに巨大なミキサーが常設してあって無尽蔵にマイクが出てくる現場以外は、コーラス全員の前にマイクを立てる訳には行かないから、幾つかのセクションに分けて複数名の音を1本のマイクで拾う様にマイクを立てなければならないわけだ。つまりそれは必然的に『演者からマイクを離してセッティングをする』事を意味する。一般的なPA用途で使用するヴォーカル用ダイナミックマイクはマイクのカプセルから大体 5cm以内で真正面から歌って正しい音質になる様に調整されてるから、離れてしまうと『近接効果』が一切消えてしまい低域がゴッソリ無くなってしまって『ぺらっぺら』な痩せた音になってしまう。しかも演者から 30cm離れるだけでも感度(出力)は 1/10くらいになってしまうのだ。 それなら、その分音量を上げれば良いじゃん…と思われるかもしれないが、そもそもPA用のダイナミックマイクハウリングを防止するため、音を拾う角度をわざと非常に狭く設定してある『単一指向性』のマイクが殆どゆえ、マイクの真正面に音源が無いと音を拾わない仕様になっている。つまり一本のマイクに向かって左右から挟み込む様に立たれてしまうと、真正面は空白になる訳で、左右の音は拾い難い仕様だから、ほぼほぼ『全く』マトモに音を拾わない状態に等しい。音量を上げても音源が真正面に無いから、そりゃもう音量を2倍以上に上げなきゃ聞こえない訳で、そうすると当たり前だが壁や天井の反射音を拾ってハウってしまうのだな。。。同様の理由で3名の真ん中にマイクを立てると、真ん中の人だけの声がデカくて左右2名の声は非常にくぐもった小さな音にしかならないから非常にアンバランスな音になってしまう。
 そんな訳で、ワタクシは一般的なダイナミックマイクを角度を微妙にズラして立て、それに加えて、レコーディング等に仕様する『高感度で指向性が比較的広め』なコンデンサーマイクを立てる事にしている。しかしコレにはコレの弱点があって、とにかく周りの音を拾いまくるし、周波数帯域も非常に広くて重低音から超高音まで拾えるから、余計なノイズまで拾ってしまうのだ。つまり一度ハウったら(伊達に高感度なので)ほぼ3倍くらいの仕返しが来る(全然ハウリングが止まらなくなる)のだ。非常にセンシティブゆえ使用はナーバスになる。そりゃもう一瞬たりともフェーダーから手を離せないのだ。突くのはとても勇気がいるし、突く場合は直ぐに下げられる様に、0.1mmずつジワジワと攻めて行かなければならない(笑)
 加え、ドラムやベースやギターの入ったポップス系のオケを使用する場合は、上げすぎるとコーラス全体を喰ってしまうし、下げると音が痩せてライブ感が無くなって、つまらないパフォーマンスになってしまうから塩梅が難しい。また、演者はオケがしっかり聴こえなければ歌えないし、オケをしっかり返せば、今度は自分の声が聞こえなくなってしまうから、コーラス全体の音をモニターから返さなければならない。すると、モニターから出た音が上記のコンデンサーマイクで拾ってしまい、またもや大フィードバック大会(ハウリング大会)が発生してしまうから、もう演ってる方も聴いてる方もグチャグチャな音になって何が何だか分からない乱七八糟状態になってしまうのだな。
 これらの問題を(限りある機材で)絶妙な指さばきとイコライザー調整だけで乗り切らなければならないから、我々PAエンジニアには高度なテクニックが求められるのだ。実は涼しい顔して結構タイヘンな事やってるんですよ。
 しかしそこは百戦錬磨で腕が良いワタクシである(え?自分で言うな?誰も褒めてくれないから自分で言ってるだけです(笑))非常に難しいシチュエーションだってモチロン格好良く素敵に纏めましたよ!

 ここのグループも曲毎にソロがあったり結構複雑なのだが、予めしっかりとした曲毎の構成や立ち位置が書かれたセットリストを作って下さったので非常に助かった。オケも中々凝っていて非常に盛り上がった。多分この二日間でお客様的には一番盛り上がったんじゃ無いかな?
 何はともあれ、大きなトラブル無く、無事に終了して良かった。「とても歌いやすかった」とか遠くからチラホラ聞こえてきたのが何気に嬉しい。本日ご出演の皆様、お疲れさまでした!またの機会をお待ちしております(笑)
 そして、全ての演目が終了した後、怒涛の片付け大会である。そして午後8時過ぎ、ようやく本日の昼食にありつく。忙しすぎてお昼食べるの忘れていたのだ。タカさんと二人でプチ打ち上げ。

 その後は 30kg以上ある自前の機材をタクシーで自宅まで持ち帰って部屋に全部片付けてようやく一息。シーバスのホットが美味しい季節ですな。

 いやはや…疲れました。泥の様に眠ります。お休みなさい!
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