中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

某企業年会のオシゴト

 木曜日、上海は雨のち曇り。気温は早朝しか判らないが、朝 4時半の段階で摂氏 3度。

 本日は金茂大厦にて行われる某企業の年会イベントのオシゴトである。朝 4時に起きて 4時半に家を出る。外は生憎の雨。しかも風も強くてカナリの土砂降りだった。
 ウチは淮海路の近くなので交通量が多い為、普段なら早朝であれば、直ぐに『流し』のタクシーが捕まるため、今日も「別に大丈夫だろう」と思って特に滴滴とかのアプリは使わずに淮海路まで歩いたのだが、待てど暮らせどタクシーが捕まらない。空車はカナリの確立で走っているのだが皆アプリで呼ばれているらしく、手を上げても全部スルー。そりゃ『年会の季節』に相まって『雨』という最悪のコンディションである。仕方無くワタクシもアプリを取り出し呼んでみるが、淮海路沿いは明け方まで飲んでて帰れない人が大勢居るらしくアプリ内でも争奪戦が行われている様で全然捕まらない。なんじゃこりゃ?寒いし眠いし土砂降りで靴の中は湿ってきたし、もう泣きたい気分で 30分待っても捕まらず、朝 5時近くなったので「始発って何時だっけ?」と思い立って駅まで歩いてみた。
 すると、実に冷酷な。。。まだシャッターすら開いてないじゃん。
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 その間もずーっと滴滴で呼び続け、40分経ってようやく捕まえる事ができた。いやぁ…参った。朝からこんな仕打ちでテンション下がりまくり。嗚呼…暖かいお風呂に入りたい…。なんてそんな事ばっかり考えてしまう。

 とは言えオシゴトである。まずは会社に行って機材を機材車に積み込まなければならない。今日の仕事はたった二人きりで受託しているのだが、ビデオ関連の要求仕様が高かった為、ビデオ機材が非常に多いのだ。12Uの大型ラックと山盛りの台車が有るので一人じゃ絶対に運べない物量である。
 そんなワケでタクシーが原因で遅れてしまったが、待って貰って約 20分遅れで会社を出発。

 …とは言え、高速道路は空いていたので、当初の予定通り午前 6時過ぎには現場に到着する事ができて良かった。サクッと搬入して中に入ってみたら、既にトラスも飛んでいて照明が上がっていた。企業の年会とは言え 450人も来るらしいので、カナリの規模である。
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 そこからは、ほぼ無言で仕込みの作業である。とりあえず今回ビデオ周りの機材が多いので、我々の機材だけで PC類が 5台+コントローラが有り、これだけのエリアを使う。この奥に PA卓と照明卓が入る。約 2時間弱で我々のエリアは完成。
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 ワタクシはこの一番手前に陣取って BGMや出し物の楽曲のポン出し等をしつつ、ビデオや SE等の全ての音源をミキサーで音量を調整してから、LRの 2mixをメイン卓に送る…というオシゴトである。当初は軽く『叩き』だけの仕事かと思ったら、今回は仕様の要求が結構高く、リップシンク(口パク)物の歌が有り、コレが 9分以上もの長尺で、サスガにコレだけは何が有っても途中で BGがコケるワケには行かないのでバックアップマシンを準備して同時に走らせ、もし片方コケた時はシームレスにバックアップマシンに切り替えられる様な環境を作りゃ無きゃイケナイのだ。加えイベント中に映像と BGMを組み合わせたり、本来バックアップ用として準備した Macからも別の BGMを瞬時に出さなきゃイケナかったり…と、もう殆どマニピュレーター的な作業になってしまった。

 しかしまぁこんなの可愛いもので、問題のポイントはそこでは無かったのですわ。本日の大問題は音の出口である『音響屋さん』だった。
 今回、音響全体の PAさんはワタクシじゃなくて、別のローカルの業者にシステムごと頼んでいたらしいので「ちゃんと鳴ると良いなぁ」なんて祈る気持ちで待っていたのだが、出音を聴いてガッカリ。まぁ…とにかく予想通り!?『音が悪い』ワケですわ。そりゃもう凹むくらい音が悪い。メインのスピーカーや、ミキサー等、使ってる機材はとても立派なんですよ、それこそ我々が普段使ってる機材の 10倍以上の値段がする様な高級機材ばっかり。
 天井が低い関係で、ラインアレイを吊らずに、下からスタックしていたのだが、ちゃんと EQを作ればカナリ良い音で鳴る筈のスピーカーなのに…出てくる音が、まぁ呆れてしまうほどヘッポコなので段々腹が立ってきた。
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 PAさんがマイクで色々と調整しているのだが、100Hz辺りが『ずーっと』ハウってて、何を喋っても「ボーン」「ボーン」とイヤな残響が残る。コレがまぁとにかく気持ち悪い。PAさんは一生懸命自分の声でワンツーをやって調整しているのだが(因みに、ローカルの業者はワンツーも、ちゃんと「イー」「アール」って中国語で言うんですよ。文化が違うと面白いよね。どの周波数の音をチェックしてるのか判らないケド) でも、こんなのフツーにローカット入れれば直ぐに消える筈なのに、何故かコレが 30分経っても消えない。なんで??意味が判らん。。。
 横から手を出したい気持ちをグッと抑えて(業界のマナー的にも、ビジネスの『座組』的にも、我々が直接手出しをしてはイケナイのだ)もう耳を塞ぎたいモヤモヤした気持ちのままヒタスラ待ち続けた。
 すると、ワンツーが終わった後に、SMAART(PCを使って周波数のピークを測定して補正するソリューション)で全体の EQをいじり始めるじゃないか!(驚)なんじゃそりゃ!「ちーがーうーだーろー!」「逆だろう!」 それじゃ今までチャンネルEQで一生懸命調整したワンツーが全部無駄にならないかい? 今まで待ってた時間を返して欲しいわ。。。もぅ開いた口が塞がらない状態。

 そして殆ど時間切れでそのままリハーサルに突入。早朝から来てるのにヲレが音作りする時間は殆ど全く無かったわ(泣)とほほ。
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 とは言え、今回、マイクを使わないダンス等のパフォーマンスが多かったので助かった。音楽ソースはビデオ素材や効果音も含め、全て一旦我々の卓に入るので、コッチの EQで大胆に全部 EQしなおして、何とか BGMだけはマトモに鳴る様に短時間で調整するべく走り回った。 iPadが無ければ絶対出来ない技である。演者には申し訳ないが、音源を叩いたら直ぐに客席に走って行って、リハの途中でヒタスラ音質調整を繰り返した。まぁダンスなので音が出てれば場当たり的なリハは出来るものね。

 色々チェックしてみたら、どうやら部屋全体が 100Hz〜 160Hzくらいにピークが有る様で、フツーに鳴らすと確かにモッコモコである。なんじゃこりゃ? あくまで想像だが、サブウーファーのクロスオーバーのマッチングが取れていない(或いはおかしい)様で、80Hz〜 120Hzぐらいの低音領域がメチャメチャ出っ張っていたので、105Hz辺りを中心に緩いQでバッサリ全体を -10dBくらい切り落としたら大分スッキリした。しかし4つ打ちキックが聞こえないとダンスは踊れないし、全体的に迫力に欠けてしまうので、64Hzくらいをカナリ尖ったQで突き直し、上は 2〜3Khz辺りがキンキンうるさかったのでこの辺を削り、逆にスーパーハイがイマイチ聴こえなくて安っぽい音だったので 12KHzより上をシェルビングで数dBほど若干突いて艶っぽくしてみた。
 ラインアレイはスタックすると凄い攻撃力なので、真正面に居るヒトは痛くて死んでしまう為、2K〜4Kはその辺も考慮したいのだが、客が入ると上は吸われちゃうからやり過ぎない様に注意が必要。この辺は毎回気を遣う所。

 そしていよいよ本番。お客様は満員(企業の年会なので当たりおまえだけど)
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 本番の直前になって、色々と演目の順番が変わったり、演出が変わったり素材が変わったりするのは、まぁ『中国アルアル』なのでご愛敬。…とは言えバタバタで全く気が抜けない現場だったが、とにかく無事に全ての演目を無事に事故無く完遂する事ができて良かった。
 MCのマイクは相変わらず下の方で「ボーん」とハウっていて音抜けは悪かったが、それでも『ハウリングが止まらない?』といった様な大きな事故が無かっただけ立派である。
 いやぁ…全ての演目が終わったのが22時ですよ。。。「ふ〜!今日は長かった〜」などとボヤいてみて、まだ片付けが終わってない事に気付いて愕然とした。これから全ての機材をバラして会社まで持ち帰らなきゃならないのだ。あ〜あ。

 会社に全部機材類をしまって外に出たら午前 0時だった。20時間労働(苦笑)である。ま、でもイベント屋なんてこんなモンですな。昨夜多少なりとも眠れただけ有り難く思わなきゃね。
 ローカル現場をやってみて、改めて自分のスゴさを思い知った!?一日だった(いや冗談ですよw) でも、まだまだこの分野は技術的に未熟感が有るのは事実だわな。こりゃまだ需要は有りそうだ。
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