土曜日、上海は雨のち曇り。気温は 28度で久々に 30度を下回った。
お昼過ぎに自宅のデシケーターに入れてあるマイク類を鞄に詰め込んで家を出る。そして傘を片手にシェアサイクルで一旦イツモの店の倉庫に寄って DIやらケーブルやらを纏めて鞄に詰め込んで高島屋に向かった。本日も毎週土曜日恒例の上海高島屋ミニライブの PA業務が有るのだ。
外は豪雨だったので、機材が濡れない事を最優先にしたためワタクシ自身がずぶ濡れである。あ〜あ。何やってんだか。。。
高島屋到着後は takaさんと二人でサクっと仕込む。本日は中国琵琶とキーボードのデュオ。ワタクシ個人的にも好きなグループなので楽しみだ。
以前にも書いたかもしれないが、中国の琵琶は見た目の木の明るさとは裏腹に、これ完全にソリッドで、ほぼ一本の木から削り出して作ってるらしい。
ギターやバイオリンと大きく異なるのは、内部に音が響くための空洞が全く無い（全部無垢の木そのもの）ので、持ってみると見た目からは想像がつかないほど非常に重い楽器なのだ。つまり『響かない』楽器なので集音が非常に難しい楽器の一つである。
今日も例によってピエゾピックアップを仕込ませて貰った。本日の琵琶奏者の小悦さんとは何だカンダで結構何度も一緒に仕事をしているので信頼関係が有るから嫌な顔ひとつせずに OKしてくれるが、これカナリ高価な楽器なので、楽器の表面に強めの両面テープ的なモノを使ってピックアップを貼るのは結構勇気が要るのだよ。万一塗装等に影響が出たらシャレにならないからね…。
琵琶のトップ部分はギターで言う所のオイルフィニッシュ的な表面処理がされていてニスが塗っていないのがせめてもの救い。また、バイオリン的なアーチドトップではなく、完全なフラットトップなので、ピエゾを貼るには適している。（でも毎回、ライブ終了後にコレを剥がす時はとても勇気が要るので毎回冷や汗かきながら慎重にやっている）
また、ピックアップを貼る位置も工夫が必要で、琵琶はトレモロ奏法が主なので、ピックが当たらない位置で且つブリッジに近すぎない場所（ボディの音色がダイジ）を探すのがキモなのだ。経験から学んだ事は、ブリッジに近付け過ぎると、エレアコみたいなプラスティッキーな音になってしまうし、離れすぎると琵琶っぽくない「ゴリゴリ」した耳障りな音になってしまう…という事。コレこーんな固い木で完全なソリッドボディな割に、ちゃんと木全体が振動してるんだよね。。。ホント驚きである。しかも難しいのは、他の楽器と異なり、中空でサウンドホールが有る楽器はサウンドホールの方向に音が出るのだが、これは完全にソリッドなので 360度の方向に音が放射状に出るから、つまり壁に反射した音も含めて全体が組み合わさって初めて琵琶の音になる…という点なんだよなぁ。 故にワタクシは毎回オフマイクとしてワンポイントステレオマイクの NT4を立てて混ぜる事にしている。ヘッドフォンで聴くと一目瞭然で、ピエゾだけだとやっぱり琵琶っぽくないのだ。エアを混ぜて初めて琵琶っぽい響きが得られる。ほんと不思議。実に難しい。
あれよあれよという間に本番。今日も実に素晴らしい演奏だった。
ホントに嬉しかったのは、曲中で突然、小悦がMCマイクを使って歌い始めた事。リハの時もそんな事は一言も言ってなかったので驚いたが、慌ててリバーブかけたのは言うまでも無い。いやぁでも実に素晴らしかった。こんなアドリブ初めてだ。
後で本人に訊いてみたら「自分でも何で歌っちゃったのか良くわからないのよ！なんだか気持ち良すぎて、つい歌っちゃった！」との事。キーボードの王さんも「私も知らなかったので驚いたわ！長年彼女と一緒に演ってるけど、こんな事は初めてよ！」と笑っていた。実に面白い。
彼女たちはイツモ凄く礼儀正しくて、毎回「やっぱり老師（中国語で専門家全般に対する呼称…つまりここではワタクシの事）の作る音が一番好き！ちょー気持ちいい！」と言ってくれるのが（もちろんお世辞だとは思うが）ホント有り難い。まぁそもそも『鳴らない』楽器な事は確かなので、普段はきっと劣悪な環境で演奏してるのだろう。自分の音がマトモに聞こえるだけでも相当シアワセな事なのかもしれない。
でも演奏中にアーティストの表情が徐々に変わってくる瞬間ってやっぱり素敵で、ニコニコしながら気持ち良く演奏してる姿を見るとコッチまで嬉しくなる。さっきの歌もそうだが、普段じゃ見られない様な驚く様なパフォーマンスが出たりするから、お客さんも我々もみ〜んな Happyになれるのが良いよね。
素晴らしいパフォーマンスで、寧ろこちらが色々なパワーを貰った。ありがたい！
にほんブログ村
