中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

ベースの改造

 日本はお盆真っ盛りである。ワタクシは相変わらず実家にて手術の順番待ち…という状況が続いている。検査も一通り終わってしまったので、一旦上海に帰る事も検討したのだが、医師や会社や妻と相談した所、この様な中途半端な状況(キモチを含め)だと却って色々な方々に迷惑をかけてしまうし、手術前に風邪をひいたり怪我なんかしたら、それこそ手術自体ができなくなってしまうので本末転倒である。それに、今は特に痛みがあるワケでは無いとは言え漠然としたダルさが続いていてイマイチ調子が悪いのも事実ゆえ、結局上海には戻らずに日本で過ごす事にしたワケだ。
 ゆえに実に中途半端な日々を過ごしている。もちろん手術の事も心配だが、それよりも色々と仕事の事やら手術後の復帰時期や将来の事の方がずっと不安である。イマイチぐっすり眠れないし、そもそも今こうしている中途半端な待ち時間が、何となく『ズル休み』をしている気分で、ずっと気後れしているのだ。
 しかし、もうイイや!開き直る事にした。考えても悩んでも何一つ解決しないし、病気の事に加え、会社や仕事上のお客さんに迷惑かけてる事まで気にしていたら、どんどんストレスが溜まってココロが病んでいくので、もう考えるのを止めた。
 社長とも電話で相談し、固定給を貰ってると余計に心苦しいから仕事は『病欠』じゃなくて『休職』にさせてもらい、文字通り完全に『休む』事にした。今はお金がかかる時期なので正直キツいが、中途半端にしてるとお互い不信感に繋がって一番良く無いからね。もし仕事に復帰できなければ仕方ない。その時はその時だ。イザとなったらその時に考えよう!

 さて『完全に休む!』と決めてからは、少し気分が楽になったので、休暇は休暇らしく自分が好きな事をして過ごす事にした。

 今日は、ずっと気になっていた実家のベースのピックアップを交換する事にした。ワタクシは普段は(上海では)YAMAHAのBB-5000という5弦ベースを愛用しているのだが、日本の実家には YAMAHAのBX-5というスタインバーガー風の5弦ベースが置いてある。弦を外してしまったがボディはこんな感じ。

 このベースは確か高校時代、まだ5弦ベースが出たばかりで珍しかった頃、当時の友人が渋谷の YAMAHAで買ってきた限りなくプロトタイプに近い物である。今でも覚えているが、彼が買った翌日からその友人宅に毎日の様に学校帰りに行っては弾きまくり、結局それを売って貰ったのだ。(ワタクシはベースらしからぬその見た目と、軽さ(5弦ベースはとにかく重いのだ)や弾きやすさに感動していたのだが、彼は買ったものの座って弾けない&音が気に入らない…という事で、お互いのメリットが一致したので売って貰えたワケだ(笑))

 BX-5はスタインバーガー風のヘッドレス&スモールボディで、BBと同様、メイプルとマホガニーを5ピースで挟み込んだスルーネックのワンピース構造ゆえ非常にサスティンが長く基本構造は悪く無いのだが、ワタクシが所有しているコレは、このモデルが出たばかりでしかも展示品だったのでプロトタイプにカナリ近い状態で、それ故色々と個人的に気に入らない部分が多々あった。
 何より最も気に入らないのは5弦目と4弦目の音量差が激しい事である。ゆえに当時から改造に改造を繰り返していた。これは後で知る事になるのだが、プロトタイプゆえ!?(…かどうかは知らないが)5弦ベースなのに4弦用のピックアップがそのまま装着されていたのだ。そりゃバランス悪いに決まっている。写真はオリジナルのピックアップ。

 しかも2ハムでやたらと音が太いが輪郭がボヤけるので、改造に改造を繰り返してシングルにして自分でプリアンプを組んで内蔵してしまった。

 また、ライブでの実用性から2ボリューム1トーンでは直ぐにピックアップ切り替えが出来ないため、BBと同様にレスポールタイプのセレクタースイッチに変更していた。わざわざアクティブ〜パッシブの切替スイッチや、バッテリーチェック用のLEDまで付いている。我ながら芸が細かい(笑)

 とは言え、どんなにいじってもやはり8ポールピースの4弦用のピックアップでは限界がある。ライブではコンプである程度はごまかせてもレコーディングではごまかしきれない。それゆえピックアップを変えたくて仕方なかったのだ。

 丁度良い機会なので、掃除やメンテナンスを兼ねて全部バラしてピックアップを交換する事にした。とてもベースのパーツとは思えない様な部品が並ぶ。



 そして全部外して素っ裸になったBX-5くん。意外と塗料がしっかり塗ってあってピアノみたいな塗装だった。

 そしてキモとなる交換用のピックアップである。調べてみると、このベースは5弦ベースの割に弦と弦の間隔が非常に狭いので、一般的な5弦ベース用のピックアップでは合わない。色々と探してようやく見つけたのがこの EMGの35シリーズである。これはバーマグネットなのでポールピースに分かれていない。つまり比較的フレキシブルに配置が出来るワケだ。

 米国からはるばる旅をしてきたピックアップくん。直輸入品ゆえイツモお世話になっている『サウンドハウス』さんで購入。



 アクティブピックアップなのでサーキットも入っている。

 しかし当たり前だがサイズが違うので、そのまま装着できる筈もなくボディを削ってザグりを入れる。弦の振動幅を考えて最も合う様に考え、また削る量が最も少なくなる様に考えてコレを選んだので、数ミリ削るだけで大丈夫だ。…とは言え深さは1cm近く掘るのでノミと彫刻刀を駆使して塗装への影響が最小限になる様に美しく削るのは至難の業。


 そして下の写真が無事に組み上がった新生『BX-5』くん。ちょっと弾いてみたが、いやぁ…超ステキである!全ての弦の音量もほぼピッタリだし、音も太い割に音程感があって実に素晴らしい。今回はブリッジ側を 35DCのハム、ネック側を35Jのシングルにしてみたのだが正解だったかな。本当は J+JのJBタイプにするか最後まで悩んだのだが、ボディが小さいので低域が弱いだろうと思い、リヤだけハムにしたのだ。指弾きではフロント・リヤ共にフルテンでカナリ理想的な音。スラップすると若干太すぎの傾向はあるが、リヤを少し絞るだけで結構理想的な音になった。いやぁ…嬉しい!
 完成後は4時間ほど猿の様に弾きまくったのは言うまでも無い。暫く練習不足だったのでコレを期にしっかり練習しようと思う。