中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

中国の古典楽器と日本の電子楽器のコラボ

 日曜日、上海は晴れ。気温はチェックしなかったので判らないが体感だと35度くらいだったかな?それほどクソ暑い感じはしなかった。
 今日は知人でありプロの二胡奏者である赵磊さんからの依頼で『上海交响乐团音乐厅』にて行われる二胡と琵琶と中国笛とピアノとエレクトーンのコラボレーション演奏会の PA業務である。
 老体に鞭打って、朝の 8時半に会場入り。そして一人であくせくセッティングである。今回完全にピンで頼まれた仕事ゆえヘルプが誰も居ない。そんな時に役立ったのがワタクシの秘密兵器 XR18だ。本格的なホールでコレを使用するのが初めてだったので、一抹の不安はあったが終わってみれば何一つトラブル無く、非常に良いパフォーマンスを発揮してくれた(まぁ経験上避けられるトラブルは予め対策を考えて全て対応したから…ではあるが)
 赵磊さんは非常に真面目で音楽的な内容のみならず音響全てにコダワリを持っている素晴らしい耳を持った人なので、リハーサルは非常に緊張する。ワタクシが知っている中国人ミュージシャンの中で、多分一番厳しいと思う。でもその分やりがいがある。

 今回のイベントは100%中国語で進められるので結構緊張した。唯一、日本人のエレクトーン奏者『麻友』ちゃんが居たので、休憩時間に彼女とだけは日本語でやりとりできて何だかホッとした。
 いやぁ…改めて痛感したが言葉って大事だね。基本的なコミュニケーションは出来ても、サスガに全部中国語だと細かいニュアンス的な部分まで汲み取れなくて、何度か聞き返してしまって申し訳ない気分になった。
 とは言え、メンタルな部分はさておき、ハードウェア的には今回は大当たりだったかな。実はこのホールにはメインの卓として YAMAHAの CL3が有るのでそれを使えば良いのだが、何せミキサーブースがヤタラ遠いのだ。このホールはクラシック専用で、いわゆる『響が良い』ホールなのだが、ミキシングコンソールが置いてある部屋は3階の端っこのガラス窓の中なのだ。
 卓が置いて有る部屋で窓を開けて会場の音を聴くと、アンプでフツーに上げた音ならいざ知らず、小さな生音を部屋に反響して鳴らす様なタイプのハコだと、距離が離れるに従ってリバーブ成分が増えるから、非常に『ウワンウワン』と籠った音になってしまい、実際に会場で鳴っている(お客様が聞いている)音とカナリ違う。ココからだと正確にジャッジできないでは無いか…(どうやらこの部屋はミキシングブースというより、レコーディング時のコントロールルーム的な役割で作られた部屋らしい)
 そんなワケで自前の某 B社の XR18を持ち込んでメインコンソールとして使ってみた。タブレット端末がメインコンソールだなんてカナリ不安だが、まぁリハでダメならメインのコンソールに切り替えようと思って試しに使ってみたのだ。

 しかしコレが今回『大当たり』だった。要はミキサーのコントローラーが iPadなので無線なワケで、演奏者の立ち位置に行って音を聴きながら調整できるし、客席の一番前から一番後ろの端っこまで行って音を聴きながら調整できるので、とても重宝した。今回 5GHz帯の WiFiルーターを持参したのだが、2階席の一番後ろまで離れても、全くコケずに完璧に追随していたので少し驚いた。5GHz帯のWiFiは混線が少ない分、速度は出るけど距離が稼げないので心配していたのだ。目測で 40mくらいあったが、直線距離で障害物が無い場所ならば 5GHz帯でも十分使えるらしい。(前回の教訓から、バックアップとして MacBook Airを有線で接続しておいたのだが結局一度も使わなかった)
 今回は、赵磊さん本人の希望から、あくまで生音を中心に据えるコンサートなため、音量が足りない楽器だけ PAから少し足す…といった方法でバランスを取る(つまり転がしモニタは無し)事を基本スタンスとする。…とは言え、お客様が入ると結構なノイズとなるので最終的には全ての音を PAから出すので結構注意が必要だ。
 先般の打ち合わせの際、このホールの音響担当者と色々と相談したのだが、普段このホールでは一度も使った事が無い!?というサブウーファーを借りて、別系統で AUXで直接ワタクシの卓から出してミックスする事にした。個人的に、エレクトーンの重低音はコレが無いとダメだ…と最初から借りる事を決めていたのだ。
 しかし実際使ってみるとクロスオーバーが微妙でマトモに鳴らすまでカナリ苦労した。メインスピーカーが密閉型?なのか、音抜けが良くてパンチは有るクセに全然ローが出ないタイプなので綺麗にクロスしない。最終的には 180Hzと120Hzで非常に悩んだのだが、結局は120Hz以下のみをサブで鳴らす事にして、後は卓のAUX上にあるGEQで調整して何とか良い感じに纏まった。
 そしてリハは続く。今回は後ろに移したプロジェクターに合わせて弾くシチュエーションがあり、演者もポン出しする方もカナリの緊張感を強いられる。

 今回、ワタクシ的には『中国琵琶』を初めて扱ったのだが、この楽器は二胡に負けず劣らず、中々『クセ』の有る周波数特性で EQが何気にタイヘンだった。あんなに軽快な音が鳴るのに実は本体はカナリ重量があって重たいらしい。全然知らなかった。


 さて、そんなこんなでリハは無事終了。でも PAエンジニアはココから本番までに一仕事あるんだなぁ。配線のケーブルを美しく整理してクリティカルな部分を養生するのもダイジな仕事なのだ。長さの問題があるから全てを綺麗に一箇所に纏める事はできないが、それでも日本人的にはなるべく美しく!?直線で交わる様に線を這わせる。


 ちょっと歪んでるけど、本番前までの短い時間で纏めるのは結構タイヘンなので、ま、今回は我ながら合格点かな(自画自賛
 そして本番までの間、ピアニストが個人練習?のために会場に来て練習がてら色々と弾き始めた。。

 このホールは根本的に生音だけでカナリ良い雰囲気が作れるのだが、お客様が入った後の『ざわめき』次第で再調整が必要カモしれないなぁ…フェーダーを突いた時と下げた時の音色の差を可能な限り小さくする様に本番直前まで細かく調整を行った。

 あ、そうそう!本日持って行った七つ道具を紹介しなきゃ。一人の現場の時は何が起きても自分自身で解決しなければならないので、結局こんな風に『七つ道具』を持っていく事にした。テスターと半田ごてが有ればたいていのモノは修理できるからね。(どれだけ B社の製品を信用していないか…が判る?)でもまぁ B社製品に限らず、特に有りがちな事故として、移動中に基板上のハンダが剥がれて接触不良を起こす事が多いので半田ごてとドライバは有って困る事はない。

 最後はスタッフも合わせて全員で集合写真。

 2幕のステージだったので夜の部が終わったのは 21時過ぎである。それから一人で片付けるので結構大変だったが、色々な意味で非常に良い経験になった。何より出演者に感謝されるのが嬉しい。
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