中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

アカデミックなのに歌心が有る

 土曜日、上海は曇り、気温は32度。
 昨夜は午前 4時過ぎに寝たので、朝が糞ツライが頑張って 7時に起きる。そして色々と機材を準備してからザッとシャワーを浴びて、イツモの静安寺のヤマハに向かった。

 そして PMCドラムコースのグループレッスンを 1時間教える。本日は 4名。今日はファンクのグルーヴについてちょっと持論を述べちゃったりして楽しかった。
 修了後は荷物を纏めてタクシーに飛び乗り、浦东の东绣路x花木路にある Live Cafe『开心果』に向かった。本日は友人の二胡奏者『潘丽』さんのライブが行われるのだ。しかも今回は日本からスペシャルゲストが居るらしく、彼女自身も興奮してしまう様な素晴らしいアーティストだそうで、前々から結構期待していたのだ。プロフィールのフライヤーはこんな感じ。読んでるだけでワクワクする。

 そして午後一からサクっと仕込んで音作り。とにかく今回の PA的なキモ(…というかマトモに拾うのが一番難しい楽器)はヴァイオリンなので、メチャメチャ多くの対策を準備して来たワケだ。
 ヴァイオリンは上手いヒトほど演奏しながら動くので、マイクスタンド&固定マイクだとキツい事が予想された為、まずは SHUREの BLXワイヤレスシステムを利用する事は決定したのだが、ヴァイオリン専用のマトモなマイクを持っていないのが悩み所だ。
 今までの経験上(赵磊の現場や、その他の現場で)ヴァイオリンのライブ収録は DPA 4099があまりに素晴らしくて、個人的には正直「コレ以外は考えられない」って感じているので、毎回帰国時に買おうか否か悩むのだが、コレがまた結構高いマイクで、しかも SHURE用のワイヤレスアダプタ(コネクタをTA4Fに変換するだけの1cmのパーツ)だけで 1万円もするので、一通り揃えたら 7〜8万もしちゃうため、ココ 2年くらいイツモ躊躇した後、結局買うのを止めてしまう…という繰り返しだったのだ。(だってヴァイオリンの現場って年に1度?くらいで、そんなに多くないんだもん。。。)
 ただ、そんなワタクシでも、DPAのヴァイオリン用のアタッチメントは非常に有用なのでコレだけは買って持っている。なにせヴァイオリンは一々高価な楽器なので表面に傷なんか付けたらタイヘンな事になってしまうからね。
 そんなワケで、マイクは普段 Sax用に使っている PGA-98Hを無理矢理この DPAのアタッチメントに挟んで使うのが現実的かな…と思っているのだが、コレが DPAのグースネックと SHUREのグースネックでは太さが違って、SHUREの方が太い為、振り回すと外れて落ちてしまうのだ。故にコレをケーブル等を止める針金のネジネジで固定して使うのが一番かな。…てなワケで、コレが第一案。
 そして第二案は SHUREのピンマイクに RODE社のヴァイオリン用のアダプタを装着して拾おうかとも思ったのだが、コレはブリッジの後ろ側に1弦と4弦の間にゴム製の橋を渡す用な感じで、マイク自体を中空に浮かせてマウントする仕組みになっている。しかしコレには一点不安な点があり、ワタクシが持っているピンマイクはボディ本体がある程度振動しないと低域をちゃんと拾ってくれない仕様なので、このアダプタを使うとゴム製ゆえ、本体は全く振動しないし、場所もブリッジの真後ろ(サウンドホールとは程遠い)ゆえ弦の生音だけで低域が全く拾えないのが難点。
 そして第三案はヘッドセットマイクを利用する案である。以前コレを使っている現場を見たことが有り、ヴァイオリンは左側のアゴと肩の間に挟むので、ヘッドセットを一番長くして頑張れば、何とかギリでブリッジの上辺りを狙う事ができるのだ。
 最後は準備した全ての案が効果無かった際の最終手段として、指向性がキツくて Highが綺麗な Beta57を一本準備した。
 そんなワケで保険に保険を重ね、4重にして臨んだ勝負なのだが、なんと、出演者に出会ってご挨拶を交わした後、5分もしないウチにアッという間にワタクシの苦悩を解決してくれた…という(笑)
 サスガ百戦錬磨!?の音楽家である! 彼女自身が自分で(まさにワタクシが渇望していた)DPAの 4099を持ってきてくれたのだ。いやぁ…ホッと安堵のため息をついたのは言うまでも無い。 いやぁワタクシは何てツイてるのでしょう! コレで今日のライブは成功間違いなしである。まーったく、この件でホンキで何日も悩んで損したわぃ(笑)まいっか。
 そんなこんなで早速リハに突入。すると、サウンドチェックを始めた瞬間からニラニラ漂う不穏な空気。「ヤッベぇ…この子らガチで本物の音楽家だわマヂで!(嬉)」と無意識に呟いてしまった。楽器から出てくる音が全然違うのだ。彼女らのモニタに対する希望も一々『正確』で『的確』なのも驚いた。たった 2dBの違いも直ぐに気付くから怖いくらいだ。「うわーちゃんと周りの音が全部聴こえてるよ」…と緊張が走る。モニタを 3回線全部別系統にしておいて良かった。でも逆に言えばこんな『やり甲斐』のある現場は珍しい。ほんと超絶嬉しいのだ。難題を言われると萌えるマゾ体質!?なワタクシである(いや、演奏者にとっては当然の要求なので決して難題じゃないんだけど)
 こんな風にシッカリ自分の『理想の音イメージ』を持ってるヒト達に仕える事は、PA屋としてはこの上ないシアワセだったりするんだなぁ(勿論その分スゲー緊張するし、タイヘンだけどね)
 そしてリハーサル開始。久々に手に汗握りつつも『手応え』というか『ドライブ感』を楽しみつつ頑張る。こんな現場は久々だ。ホント楽しい。ピアノが超絶上手くて、つい見とれちゃって手が止まるからイカン。

 アッという間にリハ終了。〜客入れとなる。本日は 100名超えたらしい。スゲー。この店で新記録じゃないかな?

 そしてアレよアレよという間に本番。

 素晴らしい演奏が続く。

 いやぁ…マジで感動した。DVD買ってしまったよ。こりゃ必見です。興味ある方は是非!
 最後に折角だから記念撮影。彼女らはいつか世界のどこかでブレイクするかもしれないなぁ…なんとなく『肌』でそれを感じる。アカデミックなのに歌心が有る。時に情熱的で攻撃的なインプロを交えつつも、決してスノッブじゃない。中々出逢えないよこんな音楽。ホントこんな現場をくれた潘丽に感謝である。

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