中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

Pro Tools | CARBON

 金曜日、上海は快晴、気温は 8度。

 朝 6時半自動起床。目覚ましは 6時45分にセットしたのに鳴る前に目覚めてしまった。丁度良い時間でラッキー。

 息子はまだ冬休み中なので一人で準備して、自転車と地下鉄と路面電車を乗り継いで松江某所まで約 2時間の通勤旅行。

 会社に到着してからは、早速昨日届いたばかりのホヤホヤな Pro Tools | CARBONのセッティング&設定から。

 CARBONは最近流行りの LANケーブルで音声信号をやりとりする方式なのだが、コレは PA業界で良く使われている Dante規格とは異なり『AVB』という MOTUや RME等が積極的に採用している方式である。

 で、昨夜軽く実験した時点で 会社の iMacには繋がるのにワタクシの MacBook Proには繋がらなくて愕然としたのだが、昨夜原因は解明したので、今日は専用アダプタを家から持ってきた。
f:id:hayap24bit:20210220100138j:image

 実は MacBook Proの USB-Cポートに接続可能な『殆どの一般的なイーサネットアダプタ』は CARBONでは使えない(AVB情報が送れないので Mac側が AVB機器を認識できない)のだ!(驚)

 色々調べて初めて知ったのだが、AVB規格は Thunderboltの技術拡張らしく、一旦 USB-Cから Thunderbolt2に変換しないとそのプロトコルが拾えないらしい。故に『USB-C → Thunderbolt2変換アダプタ』の後に『Thunderbolt2 → Ethernet変換アダプタ』を数珠繋ぎにしなければ AVB機器は接続できないっぽいのだ。
 つまり MacBook Pro等の USB-Cポートしか無いノート PCから CARBONに接続するためには現時点では『コレ以外の選択肢は無い!?』という驚きの事実。先に言ってよ〜!って感じだが、HPをよく読むと書いてあったw

 ワタクシが持ってるサードパーティ製の USB-C → LANポート付きの一般的なアダプターを 3つほど試してみたが、ことごとく全部ダメだったので、多分これ『USB-Cの曖昧な規格』のせいだと思われる。USB-Cはご周知の通り通常の USB信号に加え、ディスプレイポートも兼ねるし Thunderbolt3 規格も兼ねている。つまり『口』は同じだが、さまざまな規格を兼用しているので、流す信号は『最初に繋がったアダプタ』次第…って事らしい。

 ネットワークオーディオの世界でも『Dante』に関しては、以前試した時にフツーに繋がってライブのマルチ録音等もした経験が有るので、手持ちのアダプタでそのままイケると思っていたのが甘かった。

 何はともあれ、Thunderboltへの変換は持ってたし、Thunderbolt - LANアダプタも大昔 Macbook Airを買った時に一緒に買ったので持っていたから良かった。

 そんなワケで、ドキドキしながらデイジーチェインして接続してみたら『あっさり』認識するじゃないか…。なぁんだ、やっぱりコレが原因だったんだね。
f:id:hayap24bit:20210220101800j:image
 まだ聴き込んでないので詳細は後日改めて報告するとして、ヘッドフォンアンプの音は標準的かな。インターフェイスは目的に応じてボタン類が『色』で変わるし、プッシュ式のロータリーエンコーダーはとても使いやすい。
f:id:hayap24bit:20210220101757j:image
 ライセンスは今までの iLokライセンス(ultimateでは無く、自分の個人で持ってるサブスクの ver.2020.12)でもフツーに起動して、DSP版がサポートされてるプラグインはトラック上に現れるボタン一つクリックするだけでそのまま DSPに切り替わった。

 ただ、ここで予想していなかった事態が発生(苦笑)

 まず、1つのトラック内に AAX-DSPと非 DSPの AAXプラグインは混在できない(一つでもDSP版を挟んだら通常のAAXプラグインは黒く反転してディアクティブになる)コレは何となく想像していたので特に問題は無いのだが、大問題は、一つでも DSPトラックを作ってしまうと、Masterトラックは必ず DSPに変わってしまい、DSPプラグイン『のみ』しか Masterに挿せなくなる!という事実!
f:id:hayap24bit:20210220104021j:image
 ワタクシ、マスターには必ずリニアフェーズEQとトータルコンプ(時にバンドパスコンプ)を挟んで薄っすらと全体を整えるのだが、何せ Waves社のプラグインが多いため、AAX DSPには対応していないのだよ(泣)

 しかも、あるトラックをDSP化すると、Masterトラックのみならずそのトラックから Sendした送り先の Auxトラックも自動的に DSPに切り替わってしまうワケさ。なので、非DSPプラグインは『トラックがNGなら Busに纏めて一気に掛ける!』って事もできないんだなぁ。

 つまり、DSP化したトラックは信号の経路として、そのトラックから後ろに影響するトラックは音の出口まで『全部』影響してDSP化しますよ…って事ですな。
 CARBONは、AAX〜AAX-DSPのハイブリッド版と謳って入るが、基本的にマスターに挟む様な重要なプラグインを AAX-DSPで結構多く持ってる人じゃないと中々厳しいかもしれん。コレはトラック運用を相当考えないとイカンなぁ。

 あと地味に困ったのは、普段使ってる tc electronicのラウドネスメーターがお手軽に使えなくなった事。

f:id:hayap24bit:20210220113204j:plain
 昨今、ラウドネスレベルは非常に大事な問題なので、一般ソースを含め参考音源等は常にチェックして監視しているのだが、今まで使っていた I/Oは S/PDIFのデジタルポートが付いていて、それがマスターLRをパラって常に出力してくれていたので(内部でルーティングできたので)簡単に表示させる事ができたのだが、CARBONには S/PDIFのポートは無い。しかも ADATポートは 2in 2out(16in x 16out)有るのだが、ProToolsを起動して自分でBUSを作ってルーティングしてあげないと ADATポートにマスターLRの複製を出力させる事はできないんだなぁ。しかも、仮にこれで複製表示できても、ProToolsを落とせばルーティング情報は消えてしまうので、他の音楽プレイヤーの曲を簡単に確認する事はできなくなってしまったワケさ。何気に不便だ。
 また、tc electricのこのメーターはRCAの他にOPTICAL入力も有るには有るが、S/PDIFしか受け付けないので ADATを一旦変換しなければならない。一応プラグインバージョンも有るので試してみたが、非DSP版のみなので、AAX-DSPには対応していない。(つまりCARBONでは Masterには挿せない)まーったく、あちこち不自由だ。WavesのWLMでも良いのだが、これまたAAX-DSP非対応という八方塞がり(泣)

 そんなワケで、自宅から MOTUの UltraLite4を持ってきて、ADAT-S/PDIF(RCA)変換機として噛ます事にした。これで ProToolsと Logicからは ADAT 1-2にパラってアウトする事によって監視できる様になった。便利なんだか不便なんだかさっぱりワカラン(苦笑)
f:id:hayap24bit:20210220104016j:image
 それと、もう一点 CARBONの不具合?というか不満な点をば。これ、CARBONを立ち上げるとコアオーディオのデーモン『coreaudiod』が『応答なし』となって赤くなる。

 こいつが CPUを常に 13%〜最大で 30%くらい喰うので鬱陶しいが、とりあえず DSPの恩恵も有ってかワタクシが昔作った最も重たいセッションファイルでも普通に動作したので取り敢えずは様子見?かな。応答なし…とは言いつつちゃんと動いてるっぽいしね。
f:id:hayap24bit:20210220115011p:plain

 ネットで調べた所、世界中で何人かのユーザーが同じ症状で『CPUを食われファンの音が煩くて困る!』と文句を言ってたので、ひょっとすると MacBook Pro特有の問題かもしれない(デスクトップでは発生しない?のかな?)今後色々調べてみようと思う。

 てな感じで人柱報告でした。CARBON導入検討されてる方の参考になればコレ幸い。

 因みに先に不便な点ばかり書いたが、こと『録音』のシチュエーションでは最高に使いやすいギアである事は間違いない。DSPがこれだけお手軽になると、録音時のレイテンシー問題から完全に開放されるので実に素晴らしい。昔の高価なTDMと全く同じ感覚で録音時にほぼゼロレイテンシーでモニタリングできるのが何より嬉しい。

 ただ、ここでも注意が必要で、録音するトラックを先にDSPモードに切り替えておかないと今まで通りの(Native版同様の)レイテンシーが発生するので注意が必要。
 最初気づかずに「なんじゃこりゃ?遅れるじゃん!」って一瞬腹が立ったのだが、単純にトラックをDSPアクティブ(緑色のボタン)してなかっただけだ。昔のTDM環境なら何もしなくてもニアゼロレイテンシーなので、これは若干注意が必要カモね。

 ま、何にせよ、このままガシガシ使い倒していく予定。乞うご期待!

にほんブログ村 にほんブログ村へ
にほんブログ村