中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

RME UCX II入手

 金曜日、上海は晴れ、気温は 27度で清々しい一日。

 本日 10/1は中国の建国記念日に当たる『国慶節』である。毎年 10/1から 7日間は国慶節の連休で中国全土がお休みなのだ。
 ワタクシも今日と明日は何も予定を入れずに家族でダラダラする事にした。

 午前 10時過ぎ、丁度良い具合に一昨日のブログに書いた荷物が長春から届いたのでドキドキしながら開封する事に。
 顺丰(宅配便)は梱包もちゃんとしてるので信頼感がある。
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 中を開けたら結構立派なエアパッキンに包まれていた。さすが。
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 さて、緊張の一瞬である。なにせココは 21世紀になって 20年経った今でも偽物王国である。現物を確認するまでは安心できない。

 まずは箱を見て一安心。今回購入したのは RME『Fireface UCX II』なのだが、一つ前のモデル『Fireface UCX』もまだ現行販売しているので、良く知らない物流倉庫のおじさんが間違えて古いバージョンを梱包してしまう心配があったのだ。素人がみたら見た目は殆ど変わらないからね。

 開封前に箱を隅々まで良く確認。シュリンクの破れ等は一切なく、ステッカー類も中国で後から貼られたであろう正規代理店 Synthaxの純正シールのみだった。どうやら本物らしい。ほっ。
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 早速開封して、本体を確認。想像していたよりもずっと小さくて驚いた。 とりあえず今までメインで使っていた MOTUの UltraLite-mk4と並べてみた。同じハーフラックなのに一回り小さく見える。幅が数ミリ狭いのだが、何より奥行きが全然無い。こーんな小さいのにコレだけの内容が詰め込まれてるとは驚きだ。
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 裏返してみたら『Made in China』…というオチも多々有るのだが、どうやらちゃんとミットヴァイダ(ドイツ)で作られた製品らしい。
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 早速、ドライバ類をインストールして初期不良の確認。とりあえず全てのアナログ input & outputに一本ずつ線を繋いで、全てのチャンネルがマトモに動作する事を確認。取り敢えずココまでやって、ようやく一安心。間違いなく 2021年 8月モデルの最新版(本物)と確信できた。いやぁ…良かったよw

 色々と確認中から感じていたのだが、音はカナリ良いと思う。ただ、ヒトというのはやはり『先入観』が必ず有るし、そもそも『嬉しい』から絶対キモチにバイアスが掛かってるので、冷静になるために!? 今自宅にある 3台を並べて時間をかけて聴き比べてみた。
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 上から Roland OCTA-CAPTURE(2010日本)、RME Fireface UCX II(2021ドイツ)、MOTU UltraLite mk4(2016アメリカ)である。リリース時期が良い感じに約 5年飛びだったので「進化が分かるかも?」…なぁんて期待しつつも、黄浦区の自宅は会社のスタジオと違ってあまり大音量も出せないから、とりあえず今まで一番使い慣れたヘッドフォン SONY MDR CD900STを使って同じソースを何度も繰り返して3台続けて聴き比べてみた。Rock Jazz Pops TEKNO 等々カナリ時間をかけて色々比べる。

 結果を超簡単に纏めると、まずパッと聴いての一番の違いは、この UCX IIはとにかく『小音量時での密度が濃い』って事だな。この機器はヘッドフォンポートの出力インピーダンスを限りなく下げている(たった 1Ω !?)らしいので、それが影響してると思われる。小音量時でもホントにクッキリと「しっかり」音のディティールが見えた。他の二機種は小音量になると「小ぢんまり」してスピード感が無くなってしまうが UCX IIはそんな事は無かった。インピーダンスが低いので小さな電流でもしっかりヘッドフォンユニットを駆動できるのだろう。

 しかし、ある程度音量を上げてしまうと意外と『平坦』な音で、良くも悪くもスタジオモニタ的。リファレンス的?と言った方が良いかも。ちょっと『地味でフツー』な音に感じてしまって残念な第一印象。価格から想像する期待があまりに大きすぎたかも(苦笑)ホラね!先入観って危険w

 寧ろ MOTUの方が明るくて前に出るので良い音に感じてしまった(リスニング的にドンシャリ気味で元気な音なので)程である。確かスペック上(どこかのサイトで見た入出力をループして実験したグラフ)では MOTUはハイエンドもローエンドもゆるく丸まってる筈なのに…出音は寧ろ真逆でドンシャリに感じる。実に不思議。これだから目から得るスペック情報に騙されちゃイケナイ。スペックが劣っていても決して音が悪いわけじゃないのだよ。使ってる AD/DAやら諸々の回路チューニングによって個性が出る…っつー事ですな。でもこの MOTUみたいなインターフェースは、自宅でのリスニングやライブでのマルチアウト等には有用だが、しっかり音を作り込んでいくRecやミックス等の作業では弊害が出やすいのは確かだな。作ってて気持ちはアガるので良いけどね。創作にはヤル気も大事なので、そういう意味では良いインターフェースだとも言えるがw

 因みにもう一台の Rolandはやっぱり古い製品なので直接比べるのは酷だが、相変わらずアナログっぽくて好きな音だったので惚れ直した。これやっぱり『低音』が好きだなぁ…昔から Rolandのデジタル製品は低音が好きなんだよね。それこそ大昔、某 Sanaちゃんのファーストアルバム用の楽曲の完パケ直前に、それまで使っていたアナログミキサーがイキナリ壊れて、仕方なく横浜のイシバシ楽器まで走って、そこに有った Rolandの VM3100 proという安いデジタルミキサーを(ほんと『繋ぎ』のつもりで)買って持ち帰って何とかピンチを乗り切った…という逸話!? が有るのだがw 実際に使ってみるとデジタルのクセに低音がブリブリ出てカナリ好きだったのだ。TDの時にエンジニアさんに「このシンセベース、どうやって録ったんですか?」ってメッチャ褒められた程だ。あれ嬉しかったなぁ…。当時はハード音源だったので卓のEQを使いまくっていたのだよ。それ以来!? 個人的に Rolandのデジタル製品の低音はカナリ好みだったりする。

 さて、話が逸れた、本題の UCX IIですよ!イマドキの(かなり高価格帯の)インターフェースの実力を試さなきゃだった!

 UCX IIは、実に『素直』で、色々とソースの粗が目立って見えてくる?様な音である。「何でそう感じるのかなぁ?」と色々と注意深く聴いてみて気付いたのは、中音域の『密度』が他の 2台とは比にならないくらい濃い…って事だな。特に 1KHz ~ 2.5KHzくらいかなぁ? 歌周りのリバーブとかの音の密度というか情報量が半端なく多い気がする。音の良し悪しを判断するのって、どうしても超高域の伸びとか重低音の厚みとか両端が気になる(というか分かりやすいから耳がそっちに行ってしまう)が、ホントは最も楽器類が混み合う中音域こそが実はダイジなのよね。

 実はお恥ずかしい話、最初 mp3や m4a 等の圧縮された音源ばかり使って聴き比べていて、殆ど違いが無かったので「ま、こんなモンか。そりゃ劇的に変わっちゃ寧ろ問題だわな…」と、ちょっと(カナリ)『残念』に感じてしまっていたのだが、音源をリニア PCMに変えてみたら突然違いが出たのでびっくり! なにこれ面白い! PCMソースは奥行き感(ヘッドフォンなので奥行きっていうのも変だが)が、とにかく他の 2台とは明らかに違う。男性 Voも女性 Voも『歌』の空気感が全然違ったのだ。息遣いとか超リアルでちょっと感動。リップノイズとかヤバイくらい聞こえるw あくまで想像だが、このUCX IIは『全く飾らず』に『ありのまま』を再現する能力が高いのかもしれない。ゆえに圧縮音源は圧縮音源なりに鳴らし、リニアPCMは隙間にある細かい音の粒子みたいなものまで『きっちり』再現する事ができる機材なのかもしれない。逆に言うと普通の価格帯の I/Fは、仮に圧縮音源でも(ハードウェアの特性から)良い感じに諸々フィルタリングされて『そつなく』『良い音で』鳴っちゃうが、コレはちゃんと『悪い音』で鳴ってくれるから、なんとなく残念に感じてしまったのだと思う。

 48KHz/24bitの PCMデータ(手元にある ProToolsのセッションファイル)でコレだけ差が出るのなら、96KHzとか 192Hzで録ったらどうなっちゃうのかワクワクするわ。今までのインターフェースでは 96KHzってデータ量ばっかり増えて音質に劇的な変化を感じられなかったから手を出さなかった(寧ろ容量対効果が低いから敬遠していた)が、それって『おまけ』的に 192KHzまで対応している様な民生機だったからハード的な限界を迎えていただけかもしれない。ひょっとして、この RMEの様な比較的ちゃんとした機材を使ったら全然違う世界が見えるかも!? ヤバいワクワクしてきた。今後色々と実験してみようと思う。

 …てな感じで、とりあえず今日は Out周りの感想でした!何はともあれ、今回わざわざ個人で(会社経費ではなく)自分用として購入に至ったのは『SteadyClock FS』という、超高速でジッターを除去してくれちゃうワードクロックシステムが目的だった…と言っても過言ではないので、今後色々とじっくり楽しんでいこうと思う。個人的にここ数年はクロックの違いによる音の変化に興味があったりするので、今回実は『ちょっと高価なワードクロックジェネレーターを買った』くらいの気分なのだ。ははは。デジタル信号って『クロックが全て』と言っても過言ではないからねw この連休が開けたら、会社の全ての機材をこの UCX IIをクロックマスターにして BNCで一本化する予定w 乞うご期待!

 あまりに集中して色々調べてて、家族のことを放置しっぱなしだったので、夕方早めに家を出て家族3人で近所の日本料理『天手古舞』で夕飯。
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 帰宅後もヘッドフォン被って深夜まで色々研究。そんな健全な!? 国慶節一日目。
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